🎬『わたしは、幸福(フェリシテ)』 アラン・ゴミス監督・脚本/フランス、セネガル、ベルギー、ドイツ、レバノン/129分/ヒューマントラストシネマ有楽町にて
舞台はアフリカ、コンゴの首都キンシャサ。「幸福」という意味の名前を持つフェリシテ(ヴェロ・ツァンダ・ベヤ)はバーで歌い、一人息子を育てているシングルマザー。
生活は豊かではないが、暑い中で冷蔵庫がきかなくなった。ついこの間、修理に大金をはたいたばかりだ。もう一度修理させようと息子のサモ(ガエタン・クラウディア)に修理人を呼ばせるが、来たのはフェリシテが歌っているバーの常連客で、いつも酔っ払って喧嘩をする男・タブー(パピ・ムパカ)だった。
そこに突然、息子サモの交通事故の知らせが病院から届く……。
道路は舗装されていなくて天気の良い日は砂ぼこり、雨の日はぬかるみ。そこを堂々と歩くフェリシテの姿から目が離せなかったし、苦しみ、悲しみの中で自分を貫く圧倒的な生き方に感銘を受けた。
多様な音楽も素晴らしく、バー内部の喧騒と彼女の歌声のシーンは目をつむって聴いた。喧騒も音楽の重要な要素だった。
時々映る暗い森は彼女の眠っていて見る夢で、クラシックの演奏や合唱は祈りのように感じた。
ニコッともしないフェリシテが最後に笑うシーンにホッとすると同時に、どんな親切をされても「サンキュー」の言葉が1度もなかったのが不思議だった。