1939年。ポーランドのワルシャワでヤンとアントニーナ夫妻(マイケル・マケルハットンとジェシカ・チャステイン)は、ヨーロ ッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。
アントニー ナは、毎日、日課のように園内を自転車で駆け巡って、動物たちに声をかけたり、健康状態を見たり、動物たちのお産を手伝ったりして一心に面倒を見ていた。
だがその年の秋にドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が勃発。ヤンは「この動物園を隠れ家に提供しよう」と驚く提案をした。人間も動物も生けるものすべてに深い愛情を持つアントニーナはすぐに賛成した。
ヤンはユダヤ人の強制居住区域に忍び込んでユダヤ人たちを次々と救い出して動物園の地下や檻に隠くれてもらい、アントニーナの得意のピアノで、今は危険、安全、の暗号にした。
監督さんは『クジラの島の少女』『スタンドアップ』のニキ・カーロさん。ヒトラーの直属の動物学者・ヘックにダニエル・ブリュール。大好きな俳優さんだが『ヒトラーへの285枚の葉書』でもナチスの警官をやっている。
このヘックが前触れもなくよく来るのは、美しいアントニーナに好意以上のものを抱いているからで、アントニーナはそれをうまく利用して窮地を何回も脱するが、この隠れ家を提案した夫は、二人の仲を嫉妬する事態となる。
この戦禍中で動物園の立ち位置はヒトラーの「動物愛護」「稀少動物の保護」という政策を打つ出していて、動物の虐待も禁止されていた。その反面、ユダヤ人、ロマの民族、障害者への虐殺が日常的に行われていた矛盾に戸惑うばかりだ。
ご夫婦は300人ほどのユダヤ人を救い、戦後、「諸国民の中の正義の人」に認定された。
☆映画中でコルチャック先生と教え子たちが列車に乗るシーンが出てくる。ヤンがコルチャック先生にうちに来てくださいと懇願するが聞き入れず、先生の言いつけで、子たちを列車に乗せるのを手伝っているヤンの無念さがひしひしと伝わってきた。