ラモツォは夫・ドゥンドゥップ・ワンチェンが北京オリンピック反対のドキュメンタリー映画を作ったのが元で、政治犯として中国で逮捕されてしまう。
身の危険を感じたラモツォと4人の子どもたちは標高4000メートルの山を越えて、インドのダラムサラへ向かう。
ここがラモツォ一家の最初の亡命地。ダラムサラは約6000人のチベット人が逃げて来ている地で、彼女は夜中に起きてパンを焼いて、街角に箱をおいてパンを売っている。彼女の働きで4人の子どもと義父母の生活を支えている。
ラモツォは字が書けないので、暇を見つけてはビデオカメラに向かって数分間、日記のように話をしている。
字が書けないラモツォさんだが、お顔には品があって岩をも動かすほどの熱意が感じられた。ビデオカメラの前で疲れた表情で1日の出来事をあわただしく話す。「今日も忙しくててんてこまいだった。身体調子も良くないし……、あ、もう時間だ。もう切ります」と本当に短い時間だが、このシーンがとても有効に入れ込んでいた。
チベットの難民映画では岩佐久弥監督の『オロ』がある。6歳の時、父親と一緒にヒマラヤを越えインドへ亡命したチベットの少年オロのドキュメンタリー。オロもインド北部ダラムサラの街に住みチベット亡命政府が運営する寄宿学校「チベットこども村」に学びながら生活していた。
ラモツォの子どもらも同じような寄宿舎に入っていて、お母さんがたまに来るのを待ち焦がれていた。
思ったほど辛そうでないのはラモツォさんの明るい性格だからだろうか、子らも身綺麗でミッキーが漠然と思っている「亡命者」とは違う。
最後に5人一緒にすむところはラモツォが家政婦さんとして働いているすごいお金持ちの家。そこにどやどやっと4人の子も入り込んでいた。
もちろん家事などは分担してやってはいるが「4人子連れ家政婦さん」だ。日本なら考えられない事なので非常に驚いた。