佐々木満(二宮和也)は東京の一等地で食材にこだわり抜いた店をオープンしたが、経費がかさみ2年で閉店。
多額な借金を返すために、死期が迫った病人に希望する料理を提供する「最期の料理請負人」という奇妙な仕事をしていた。「絶対味覚」を持つ彼の元には全国から依頼が来る。
そんなある日、思いがけなく中国からの依頼が入る。その依頼とは1930年代に日本軍の特命を受け満州に渡った天皇の料理番・山形直太朗(西島秀俊)が創作した究極のフルコース「大日本帝国食菜全席」再現だった。
高額の報酬の条件には、闇に消えたそのレシピを見つけることも含まれていた。捜すうちに料理に対する山形の「情熱」と敵味方のない「人間愛」に気付かされて行く。
どこのテレビ局も「グルメ番組」はお約束ごとのように毎日放映しているが、今回ご紹介する映画は一度食べた料理ならどんなものでも再現できる「絶対味覚=麒麟の舌」を持つ料理人の話だ。
音楽では「絶対音感」という言葉がよく使われるが、この音感能力=素晴らしい演奏家とはいかないのが現実で、料理にしても「絶対味覚」を持っていても素晴らしい料理人の道はそれだけでは足りないということだ。
原作は料理番組「料理の鉄人」のディレクター・田中経一氏の小説家としてのデビュー作。監督は『おくりびと』で第81回アカデミー賞・外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎。
現代の青年料理人を表情豊かに演じる二宮和也、綾野剛。1930年代の男の風貌と気骨を見せてくれる西島秀俊、竹野内豊。一心に夫を助ける宮崎あおい。
主演級の俳優たちが料理の本髄に迫ると共に「大日本帝国食菜全席」春夏秋冬112品のフルコースを堪能させてくれる。