2017年10月10日

山形国際ドキュメンタリー映画祭(5)『隠された心臓』『機械』

福岡アジアフォーカス映画祭で親しくさせていただいたNさんが、山形ドキュメンタリーにも2泊3日で参加された。福岡では個人的にはおしゃべりしたことがなかったが、ミッキーと年齢が近いことがわかった。お若く見えて10歳は下と思っていたので驚いた。 2人で2ヶ所のお店で食事をしたが福岡にかなうお店はなかった。

🎬『隠された心臓』クリスティーナ・カレアー、ヴェルナー・シュヴァイツァー監督/スイス、ドイツ、南アフリカ/2008年

1967年12月。アパルトヘイト政策の南アフリカのケープタウンで、世界初の心臓移植手術が心臓外科医クリスチャン・バーナードによって成功した。医学界はもとより世界中の大ニュースになったが、その手術はバーナードだけで成し遂げたものではなかった。

2001年に黒人医師ハミルトン・ナキがこの歴史的手術に参加したといい出して……。

興味深い内容で上手い構成のドキュメンタリーだった。

ナキの病院での仕事は確かゴミの運搬で外仕事だったが、暑いので中の仕事を希望していた。しばらくして中で手術室の清掃などをするようになる。覚えがよくだんだんと医師の手先などを見ていてやり方を覚えたようだ。

疑いを持ったわけではないが「世界最初の心臓移植手術」を調べるとクリスチャン・バーナード先生の名前はたくさん出てくる。「世界最初の心臓移植手術の疑惑」と調べ直しても何もヒットしなかった。

ナキはバーナード先生と2人協力して手術を行い、手が思うように動かなくなったバーナード先生の指示通りに細かい手術をしたと主張していた。世界から何人もの医師や医師の卵たちに手術のやり方などをナキが教えたとも言っていた。

この作品は手術成功の時から2人の人生の違いを交互に映していた。バーナード先生は美男子で女好き、離婚、結婚を繰り返す人生。一方のナキは粗末な宿舎住まい。家庭では病院のことは一切話さなかったらしい。

🎬『機械』ラーフル・ジャイン監督/インド、ドイツ、フィンランド/2016年/71分

経済成長が著しいインドの巨大な紡績工場。工事内部は大きな機械が並んでいて、機械を操作する出稼ぎ労働者たちの姿を映し撮っている。

監督さんは祖父が紡績工場を所有していた家柄で、カリフォルニア芸術大学で映像技術を学んだ方。黙々と働く人々とは当然、身分の違う方。監督自身も「私がホテルで飲むワインの値段は、運んで来たボーイの1ヶ月分の給料」と言っていた。そういう国といいたかったのだろう。

撮影した工場は祖父のものだから、監督さんなら踏み込めない場所ではない。しかし労働者たちはそんなことなど知らないらしい。

最後に労働者たちは「俺たちを撮ってどうする?上にかけあって12時間労働を8時間にしてくれるよう言ってくれ、言ってくれるなら俺たちはなんでも協力する」と口々に懇願されてドキュメンタリーは終わっていた。

その終わり方は悪くないし監督に向けられた願いが簡単に叶うとは思わない。だけど監督さんはこう言ったのだ。「皆さんが最後のシーンを見て、何をしたらいいのかを考えてほしい」と言ったのだ。

まあ、通訳を介してだから本当にこう言ったのかはわからないが、最後の労働者の願いを聞いて「どうすることも出来んよ。監督さんこそ出来ることたくさんあると思うが……」とだんだん腹が立って来た。トーク途中退場。

ドキュメンタリー自体は撮影技術といい、照明といい、音声音響の整音がしっかりしていた作品。だけど金やダイアモンドの指輪を両手につけた監督さんの印象は良くなかった。
posted by ミッキー at 23:01| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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