2017年10月08日

山形国際ドキュメンタリー映画祭(3)『カラブリア』『ニッポン国VS泉南石綿村』

🎬『カラブリア』ピエール=フランソワ・ソーテ監督/スイス/2016年/117分

スイスの葬儀屋で働くジョバンとジョゼは、遺体をイタリアのカラブリア州まで霊柩車で移送する事になった。行きだけでも3日かかる仕事だった。

セルビア出身のジョバンはジプシーの歌い手でギターの名手でもある。ジョゼはポルトガル出身でインテリの現実主義者。対照的な二人は車内で冗談を言いながらも自分の信じていることや人生を語り合う。


素晴らしい作品だった。しかしどこまでドキュメンタリーなのか、言葉は悪いが「やらせ」が入っているのではと感じるほど出来すぎた部分がある。そこをどう解釈するか大きく評が分かれると思った。

亡くなった棺桶の中の老人もジョバンとジョゼも移民でスイスに来たのだ。カラブリアの地に着いた時、ジョバンは「こんな美しい地なのにどうして故郷捨てたのかな」と言っていたのが印象に残った。


🎬『ニッポン国VS泉南石綿村』原一男監督/215分

明治の終わりから石綿(アスベスト)産業で栄えた大阪・泉南地域。肺に吸い込むと長い潜伏期間(20年ともいわれている)で、後に肺ガンや中皮腫を発症するアスベスト疾患の責任を求めて、工場の元労働者とその家族、周辺住民たちが国家賠償請求訴訟を起こす。一審で勝訴するが、国は控訴を繰り返し長い裁判の間には次々と原告は亡くなっていく。

『ゆきゆきて、神軍』原一男監督の23年ぶりの長編ドキュメンタリー。原告、弁護団、裁判所そして日本国、その実態がつぶさにドキュメントされていた。

最高裁判決までの8年以上にわたる間に何人もの人々が苦しみながらお亡くなりになっている。
そんな中で「肺がんにかかって命はいくばくもないが、その会社に勤めていたおかげで、家も買えたし、子どもにも教育できたし、年金で生活もできているから、被害者団体に入るかはすごく迷った」という方もいたし、石綿工場のすぐ隣に家や畑があって被害にあった人もいた。

ミッキーはアスベストの怖さは知っていましたが、泉南地区のことは知らなかったのでとても勉強になった作品。
posted by ミッキー at 14:55| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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