🎬『ガス・ステーション』タンワリン・スカピシット監督/タイ/110分/日本初上映
人里離れた砂漠のようなところでガソリンスタンドを営む男前のマン(パラマ・イムアノータイ)の元には、彼に恋心を抱く女性二人が毎日のように訪れてくる。
そのふたりとは、いつも赤いドレスを着ている美しい中年女性と張り合うように、毎回派手なコスプレで現れる女子高生。しかし、彼には忘れられない女性がいて…。
タイでも西部劇のような砂埃のような地域があったのだろうか。 無国籍感漂う独特の世界観の中でなかなか真相が見えて来ないラブストーリー。
途中で猛烈な睡魔💤が襲い支離滅裂ながら、彼が想っているのは放浪癖のある妻で、どうしていつもどこかへ行ってしまうのか理由がわかるのだが、今までその苦しみから救えなかった無念な気持ちが無表情ながら伝わってきた。
自由奔放な二人の女のいでたちとその色合いが沈んだ男の気持ちと対比しているようだった。
🎬『父の選択』ヤン・ティン・ユエン監督/オランダ・中国/80分/日本初上映
1965年から約10年、毛沢東の文化大革命から逃れて香港に来て、さらに未知なる国・オランダへと移り住み、そこでレストランを経営するという人生を歩んだ父親の選択に、疑問を持った監督さんは、どうしてその選択したかを確かめていくドキュメンタリー。
父親は香港に近い村・大鵬(ダペン)の出身で、文化大革命時に香港に移住する人が多かった。香港ではタクシー運転手をして妻と一人娘(監督)との幸せな日々をおくっていたが、突然、父親の兄弟のいるオランダに行く。娘にとって香港の豊かな生活を捨ててまで行った父親の思惑が理解できないのである。
ずっと香港に住んでいる従姉妹は大きなマンションの中で4つの部屋を持っていて裕福に暮らしている。オランダでの生活が娘にとって両親がレストランで働いていたのでいつもひとりぼっちの寂しい思い出しかない。父母もずっと香港に住んでいれば違った境遇にいただろうにと幸せな時を刻めた香港時代を思い出している。
母親もタクシーの仕事から帰ってくると父親の儲けたお金を数えるのが楽しみなくらい多かったと懐かしく語っている。
今は香港に戻って老後を送っている両親に、オランダに行ったことなどを聞くが、母親は「お父さんの言う通りについて行くしかなかった」と言うばかり。一方、父親は一切何も語らない。その背景には中国という国が作り出してきた大きな時代のうねりがあるように感じた。