サラリーマンの信(浅野忠信)と奈苗(田中麗奈)は双方とも再婚同士。彼女には二人の女の子がいて、信には元妻(寺島しのぶ)と暮す娘がいる。彼は今の妻、妻の連れ子2人の4人家族の父親として誠意を尽くして暮らしていた。
しかし、奈苗が妊娠したことがわかってから長女・薫(南沙良)が本当の父親に会いたいと言い出す。奈苗の前夫・沢田(宮藤官九郎)とは夫の暴力が原因で離婚していたので、信も奈苗も会うことには反対だったが……。
超現実派のミッキーには「素敵な場所、素敵なお店、素敵なお話、でもこれで生活できるのかな ?」という傾向の監督作品には乗れなかったが、この新作はずーんと重くリアリズムを感じさせて貰った。
直木賞作家・重松清が1996年に発表した同名小説+脚本が荒井晴彦という土台の確かさがそうさせたのだろう。
まあ、正直な感想は「疲れた、こんなに苦労してでも結婚したいのだろうか、確固たる家族を作りたいのだろうか」と思った。
『淵に立つ』の浅野忠信の面影がちらついて「いつか豹変するのではないか」とドキドキしながら観た。家庭ばかりではなく、仕事場での苦労がある父親が、こんなに我慢していいお父さんをやっている……、
それに引き換え、薫の父親は正反対なダメ男だ。でもその男の行動や話の場面になると大きく息を吸い込むことが出来た。
20年ほど前の小説だが、今、こんな形態の家族はたくさんある。現実にいろんな事件も起こっている中で、今、映画化される意義は大きいと思った。