東日本大震災からおよそ5年がたった福島県いわき市。市役所職員の金沢みゆき(瀧内公美)は仮設住宅で父親・修(光石研)と暮らしている。父親は仕事も見つけようともしないで補償金でパチンコ屋に入り浸っている。
週末になるとみゆきは、高速バスに乗って東京へ行く。父親には英会話の勉強に行くと言って渋谷でデリヘル嬢として働いている。
そんなある日、元恋人の山本(篠原篤)からやり直したいと言ってきたが……。
みゆきの周辺を静かに丁寧に描いている。5年経っても癒えない諸々のことは、きっと部外者には「理解できない」痛みと思う。同じ大震災にあった人をひとくくりにもできない事情が見え隠れする。
これが10年経ったらどうなるのかとふと考えたが、亡き人への思いが消えることは「生きている」間は薄まることはなく、苦悩が消える時は自分が亡くなる時だ。
それまで苦しみを「もっと辛い境遇」に置くことによって、一瞬でも忘れたいがために週末デリヘル穣に身を沈めるのだと感じた。
光石研、高良健吾、柄本時生、三人はほとんど交差しないが、みゆきにとって三人の距離の遠近の違いが良かった。同じ市役所勤務の柄本とはほとんど交流はないが近い将来に親しくなれるような気がした。そして、彼女はどんな時で手を抜かなかった食事を柄本とその弟が一緒に食卓を囲む姿が浮かんだ。