毎日、同じ時間に自営するタバコ屋の前の交差点で、写真を一枚だけ撮るのを日課にしている店主。妻の死から筆が進まない小説家。人の名前をかたり父親を探す黒人少年。タバコ店主の昔の恋人の相談ごと。
いくつもの人生が交差する場所・タバコ屋から派生する心温まる物語。
映画見始めの15年ほど前、感動して同じ日に続けて観た作品。内容なんかとっくに頭に入っているが、もう一度と観ようと高田馬場の早稲田松竹に来た。
前にみたのが嘘みたいな新鮮さと、えっ、こんな場面あったのか?と驚きの連続だった。だから二本立てのもうひとつ『イン・ザ・スープ』を半分見てから映画館から外出券をもらって、いつも行く定食屋で一休みして、二度『スモーク』をみた。15年前と同じだ。
今ならタバコの煙がすると顔をしかめたくなるが、スクリーンの中ではこの「煙」が主役。エリザベス1世の旦那様が「煙」の重さを測った話や、毎日カメラ写すようになったきっかけの話があじわい深かった。
🎬『喜劇女は男のふるさとヨ』森崎東監督/1971年/ラピュタ阿佐ヶ谷
ストリッパーを斡旋する「新宿芸能社」の金沢夫婦(森繁久弥と中村メイコ)には、お父さんお母さんと慕ってくれる踊り子笠子(倍賞美津子)がいて、興行先から送金してくれたお金が五百万になった頃、不意に戻ってきて「お父さん、お母さんの眼鏡にかなう男と結婚したいから探してくれ」と頼み込んできた。
だが、笠子が帰ってきたと知った昔のヒモに、暴力バー「コスモス」に連れ去られるという事件に巻き込まれてしまう。もちろん必死で笠子を取戻した金沢は大怪我をするが、それを見て怒り狂った妻は汚物のたっぷり入ったバケツをコスモス店内にぶちまけた。そんな騒動に笠子は責任を感じて、また旅興行に出て行った。
まるで女版「トラさん」のようだ。お化粧なしでぼーって立っている緑魔子さんが最初に画面に出てきた時、後ろの席の男がうめき声みたいにうぉ〜と言った。
そう、倍賞美津子さんを明とすると魔子さんは暗の部分のような生々しさがあって、ミッキーもドキドキしながら、したたかだが真っ直ぐに生きる女たちを見せてもらった。
テレビ画面でNHKの一日が終わる時の映像や声が流れ、君が代も流れていた。テレビを見ないが今でも君が代が流れているのだろうか。