2017年06月05日

東京・映画三昧デー(5)今日もラピュタ阿佐ヶ谷で『コント55号 応答せよ!危機百髪』『鰯雲』

東中野から三つ目の駅・阿佐ヶ谷から歩いて2分。そこの一部分は舗装されていない道がすこしあって映画館のスタッフさんが水撒きをしたり花壇に水やりをしている。木造の階段を上がるとロビー。手入れされた花壇を見ながら映画が始まるひとときを待っている。

チケット売り場は10時から。順番取りのためにカウンターの前は手に馴染んだ鞄が数個、列をなしていた。ミッキーも6番目に竹で編んだ手提げを置く。時間がくると静かな女性の声で案内してくれる。こんな雰囲気の劇場だ。

🎬『コント55号 応答せよ!危機百髪』野村芳太郎監督/1970年

萩本金助(萩本欽一)の初恋は駐在さんの娘・静子(長山藍子)。中学卒業と同時に彼女は少年院の院長になった父親と一緒に遠くに行ってしまった。静子を想うあまり自分も警官になろう、そして静子を嫁に……と発奮して、やがて刑事となり東京に赴任する。

東京での一人暮らしの部屋でも静子のデッサンに向かって語りかけている。

配属先では、先輩・蟹形平次郎(坂上二郎)とコンビを組む。平次郎は若い時少年院に入っていて、そこで院長の娘静子を知り、更生して刑事になり、今は念願の静子と所帯を持っていた。男の子(皆川おさむ)にも恵まれて、貧しいながら幸せに暮らしていた。

金助はそんなことなど夢にも思っていない。「先輩の奥様の名は静子さんですか」と偶然の一致を喜んでいる。

コント55、面白い、懐かしい。長山藍子さん色っぽい。ピーター若〜い…このコンビが街のヤクザの抗争を取り締まろうとするドタバタ喜劇。会場は8割の入り。皆、懐かしみながら笑って観ていた。

🎬『鰯雲』成瀬巳喜男監督/1958年

東京の郊外・厚木のそのまた奥の農村で、新聞記者の大川(木村功)は農家の実態を調査していて、八重(淡島千景)の家を訪ねていた。八重は女学校を出ていたが夫を戦争で亡くし姑(飯田蝶子)と小学生の一人息子・正(山内賢)の3人で暮らしていた。

しっかり自分の意見を言う八重は大川と話が合い、胸がすく思いだった。自転車が壊れてしまった大川を自分の自転車で駅まで送った時、偶然立ち寄った食堂「千登世」で女学校時代の友人・千枝(新珠三千代)に偶然、再会した。

八重の実家を継ぐ兄・和助(中村鴈治郎)は同じ村に住んでいる。戦前は大地主だったが今はわずかな農地で大家族を養っていた。そんな家の長男(小林桂樹)のところには嫁なんか来ないと諦めていたが、大川が世話してくれて話が進んでいくが……。

心打たれた。この秀作がこの年のキネマ旬報のベストテン第12位。1位は『楢山節考』。こんな名作が12位と驚いているわけではない。この上に11本のもっとすごいのがあるんだ…と思って驚いたのだ。

この年にはミッキーは11歳、街中で暮らしていたが女の人が遊んでいるすがたは記憶にない。母もいつも働きづめだった。そんな記憶しかない。父は次男だったのでいわゆる分家。本家は敷居の高い家で母の実家の人が来るとまずそっちに行ってからうちに来ていた。

そんな昔のことが画面のあちこちに散らばっていた。

この映画出てくる人々は市井の人ばかり。街とは厚木をさし、東京などは海外くらいの遠さの感覚だ。今と比較してあーだこーだと言うような映画ではない。

目の前の現実に立ち向かう女の強さがひしひしと伝わってきた。古い映画ではあるが、今でも通じる成瀬監督ならではの女性への応援歌でもある。


posted by ミッキー at 09:01| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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