コングラーヴェ(法王の選出)のためにヴァチカンを訪れたホルヘ・ベルゴリオ枢機卿(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ/青年時代・セルヒオ・エルナンデス)は、運命の時を前にして、自分の歩んで来た半生をふりかえっていた。
現ローマ法王は1936年にイタリア移民の子としてアルゼンチンのブエノスアイレスに生まれる。1960年、学友や恋人・ガブリエラの反対を振り切って、神に一生仕えることを選んだ彼は、持ち前の情熱で頭角をあらわすが、宣教師として日本行きを強く願うが「信仰が足りない」と言われアルゼンチンに留まることになった。
その後、彼はアルゼンチン管区長として約6年間務める。その期間はアルゼンチンのビデラ軍事独裁政権の時代で、多くの一般市民や教会関係者が拷問のうえ殺害されていた。
去年のイタリア映画祭で観て強く公開してほしいと思った作品。今回、改めて試写で観せていただいたが、感動はもちろんのこと勉強にもなった。
神につかえる方は特別な人間と思いがちだが、法王フランシスコは庶民的な方。最初のシーンでは自分の洗濯物を干している。
映画祭の時、監督さんも来日されてトークがあった。「自分は信仰はないが法王フランシスコのことを調べていくうちに、人柄に惹かれて監督を引き受けた」と語っていた。
彼の青年期はアルゼンチンの暗黒時代で、軍に捕らえられた人々を注射で眠らせて飛行機からラプラタ川に放り投げる衝撃的なシーンや、政治色の強い内容の中で翻弄されながらも、必死で行動する若き法王の姿を力強く捉えている。
日本の宣教師を希望した彼に「信仰が足りない」と言わしめたのは神の采配と感じた