ここはブカレスト郊外のロマ族が暮らす地域。そこで10歳の少年トトは、姉二人と古くて狭い公営住宅で暮らしている。父はいない(どうも長女と下二人の父親は違うようだ)。母親ペトラは麻薬売人で捕まって7年の懲役に服していて、後1年くらいで出られる予定。
母親は実弟に子らの面倒を頼んだようだが、弟の不良仲間が夜になると集まってきている。
長女のアナ17歳は部屋の掃除、弟の世話などしていたがドラッグを止められなくて、ついに警察に捕まり何か月か刑務所に入れられる。そんな状況の中、次女のアンドレアは弟のトトを連れて孤児院に入る決断をする。
これは一昨年の山形ドキュメンタリー映画祭で上映された作品。ミッキーは観ていなかったので1日も早くと焦っていたが、歩いて行けるポレポレ東中野でやっていたので早速観に行った。
なんて不幸な3姉弟だろうとは思わなかった。この特異な地域で日常に起きていることを、平和ボケの日本で暮らしている人間が、この子らのことや母親を非難できない。
母親はドラッグの運び屋で捕まったが、3人子持ちの人に他に生きるすべはあっただろうか。
母親の弟に世話を任せたせいで、弟の不良仲間が夜入り浸り、次女のアンドレアは友人の家を転々とするから、弟に任せたのは間違いだったが、他に頼る人もいなかったのだろう。
長女のアナも母親が刑務所に入った時、13〜14歳くらいだから身近にあるドラッグに手を出すのは責められない。
だから次女のトトと二人で孤児院に入る選択は間違っていない。勇気ある選択だと思う。
この作品には「どうしようもない苦しみ」「明るい希望も感じるが将来はどうなるかわからない」の狭間を行き来している。
それはここの地域だけのことではないと受け止めないといけない作品だと痛切に感じた。
辛いドキュメンタリーだが、正視しなければならない作品だった。