🎬『追憶』降旗康男監督/99分/5月6日より東宝系映画館にて全国ロードショー公開
1992年の春、舞台は北陸・能登半島。
家庭の愛に恵まれない環境の少年、四方篤、田所啓太、川端悟の3人は軽食喫茶「ゆきわりそう」を営む仁科涼子(安藤サクラ)や店の常連の山形光男(吉岡秀隆)をまるで両親のように慕たい、5人は家族のようにしばらくの間暮らしていた。
しかし、ある事件をきっかけに幸せだった5人の生活は終わりを告げる。彼らは二度と会わないことを誓って散り散りになる。
それから四半世紀。篤(岡田准一)は富山県警の刑事として、事件現場で遺体となったガラス屋の悟(柄本佑)と対面する。そして容疑者として浮かび上がったのが建築業の啓太(小栗旬)だった。
このところ日本映画から目が離せない。俳優の個性的な魅力、経験豊かな監督、脚本、撮影などの製作陣がじっくりと腰をすえた重厚な作品が多い。
その中でも、 亡き高倉健主演映画『駅 STATION』『鉄道員(ぽっぽや)』の名作コンビ、監督・降旗康男と撮影・木村大作が9年ぶりにタッグを組み、主演に『海賊と呼ばれた男』の岡田准一 を起用。深い因縁を持つ過去の事件から25年を経てあぶり出された人間ドラマだ。
過去の事件に関わった男らは、今、目の前で起きている殺人事件に容赦なく直面させられる。だが難解なミステリーとなるはずが意外な展開で呆気なく終焉をむかえる。
観る者の心にざわつきだけを残したあと味の悪さは否めないが、このしまい方は現代の世相を的確に表しているようにも感じた。
人間の心情を察するような北国の情景が、神々しい輝きを持って画面いっぱいに広がっていた。