イギリス北東部・ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイク(デイブ・ジョンズ)は、妻を亡くしアパートで一人暮らし。持病の心臓病が悪化して医者から仕事を止めるように言われた。
失業保険や疾病保険の国の援助を受けようとするが、複雑な制度の上、それをネットで申し込むなど戸惑うことばかりで手続きは先に進まない状態だった。
そんなとき、役所の中で必死に苦しい状況を訴えるシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ) と二人の子供を助ける。自分よりもっと大変なこの母子を見て「これは君のせいではないし、なにも恥ずかしいことじゃないよ」と優しく声をかける。
そして同じ苦しみを味わう者同士、悪戦苦闘していく。
100分中、一切の無駄がない映像と台詞、そして俳優選びの眼力はさすがケン・ローチ監督だ。
パソコン苦手世代にとって身につまされる出だしで、右往左往する姿はイギリスだけに限ったことではない。
役所や失業保険をもらう窓口は、どの国でも同じように思っていたら、最近、娘が失業保険を受け取ったり相談していたりしているので、様子を聞くと、日本ではけっこう親切らしい。
若い子だから親切なんじゃないの ? と言ったら「お母さんの子だから、若いって年代じゃないよ」と鼻先で笑われた。
厳しい人生の現実を描いたこの作品、体制側の怒りは言うまでもないが、行動力、ユーモア、人間愛でいっぱいだ。苦境も友人や相談する人がいるだけでも、こんなに違うのかと嬉しくなった。
主役をつとめた俳優さんは、イギリス出身の有名なコメディアン。今作で第19回英国インディペンデント映画賞の主演男優賞を見事受賞した。