北朝鮮に住んでいた主婦・マダム・ベーは、家族のために出稼ぎしようと中国に行ったが、だまされて売られ、働き手として農家の嫁にされてしまう。
中国人の夫とその父母との生活は2年間。はじめこそ憎んでいたが、悪い人たちではなく次第に慣れていった。彼女はそこで生きていくために、北朝鮮から脱出をさせるブローカーとなることを決意する。
北朝鮮に残してきた夫、息子(二人いる)たちの将来を考えて、家族を脱北させ、一緒に韓国に行くという計画を実行していくが……。
北朝鮮の女性マダム・ベーに密着するドキュメンタリー作品。今、例の北朝鮮ニュースで持ちきりだ。映画も上映中の『太陽の下でー真実の北朝鮮ー』がある。
今までに北朝鮮関連の映画、ドキュメンタリーはほぼ全部みているが、皆、観応えある作品で観れば観るほど「すごい国だ、よく民衆は我慢している、きっと厳しい環境で暮らしているのだろう」と思っていた。
しかし、ある雑誌で「それしか知らない北朝鮮の人々をかわいそうな民と一方的に思うことはいけない」という文言があった。
そして、このマダム・ベーのドキュメンタリーを観て改めてそれを感じた。ベーさんのバイタリティーと持ち前の明るさ、それと彼女が「情」の深い方というドキュメンタリーの「素材」の素晴らしさが際立っている。
携帯電話片手に脱北者に大声で指示をしている。それがけっこう無防備に感じたし、ここには今まで観てきた作品の「決死感、悲壮感」はない。
彼女はどうして夫、子らを脱北させようと思ったかのくだりで「中国に来てから時々、豆満江に行って夫にあったが、その時の痩せ方、やつれた姿に驚いて…」と語っていた。え、そんなところで会うことができたのか、とも思った。
そして、韓国に連れられて来た男の子二人、もう子どもとはいえない年齢だが、韓国にきたけど顔の表情を見る限り「幸せ」は画面からは伺えなかった。
2017年初夏に渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開される。
🎬『 姉妹関係 』トレイシー・チョイ監督/マカオ、香港
1999年にマカオはポルトガルから中国に返還された。返還前、姉妹のように仲良くマッサージパーラーで働いていたリンとセイだったが、セイは台湾から来た男性と結婚して今は台湾で幸せに暮らしていた。
そんなある日、新聞の尋ね人で自分の名前を見つけたセイ。それはかつて、リンと一緒にかけた保険が満期になった知らせで15年ぶりにマカオを訪れた。
リンは亡くなっていて、遺児の青年ロクがいた。ロクは将来になんの希望も見出せない男の子に育っていた。
女たちの深い、深い、友情物語だ。ここでいうマッサージパーラーは性サービスを提供する場所で孤児院育ちのセイに、親切にしてくれた先輩がリン。
そのリンが誰の子かわからない子を妊娠して、堕胎の寸前に「二人で育てよう」とセイが言って、ロクが誕生した経緯がある。
それからいろいろあるが、公開してほしいのでやめておく。この映画祭で涙が出そうになったのが3作品あった。これもその一つだ。