「グランドピアノがぬれたら大変だからビニールをかぶせないと!」とあわててみえたが「ピアノなんかはいらないので、パソコンは何か被せてください」とミッキーは慌てずビニール傘を💻に応急的に立て掛けた。
原因は上階との「間」の菅の劣化で水もれしたらしい。古いマンションではよく起こることだ。もちろん、試写は休んで、家で読書や掃除をして過ごした。
🎬『エリザのために』クリスティアン・ムンジウ監督/ルーマニア、フランス、ベルギー/128分/東京上映中、名古屋は2月18日より伏見ミリオンで上映
ルーマニアに住む50歳になる医師ロメオ(アドリアン・ティティエニ)には、イギリスのケンブリッジ大学に留学するための重要な試験を控えた愛娘エリザ(マリア・ドラグシ)がいる。
ロメオには若い愛人がいて、家庭は決してうまくいっているとは言えない。
ある朝、ロメオは車で娘を学校まで送っていくが「ここでいいわ」と言われて学校のそばで降ろすが、そこから学校までの途中で暴漢に襲われてしまう。
大事にはならなかったが、娘の動揺は大きく、留学を決める最終試験に影響が出そうと心配したロメオは、警察署長、副市長、試験監督とあらゆるツテを頼って試験に少しでも有利に運ぼうと奔走するが……。
監督さんは、チャウシェスク政権下のルーマニアで違法な中絶をする女子学生と、それに付き添うルームメイトの辛く長い一日を描いた『4ヶ月、3週と2日』、2005年にルーマニアの修道院で実際起こった「悪魔つき事件」を基に描かれた『汚れなき祈り』のクリスティアン・ムンジウの最新作。
さっき観たばかりの映画すらぼんやり気味のミッキー。でもこの監督さんの作品だけはしっかり(?)覚えている。突き刺さる映画と言える、特に女性には。
この家族1人ひとりに共感や反発を感じた。
まずお父様、外科の名医だ。この国の地位や家庭をみると上の下あたりと思う。中の上とは違う「上の下」というのがミソのような気がする。
浮気相手には言語障害の幼い息子(ひょっとしたら浮気相手の連れ子かもしれない)がいる。ちょっと暇をみつけては立ち寄って息抜きしている。浮気相手の若い女は美人で知性もあり、人間的にも悪くない。
妻は大人しい女だが暗い顔と愚痴と心配事しか話さない。映画中笑顔はなかったはず。こんな女、いや、こんな奥様の家庭に帰るのはいっぱしに外科医をやってるお父様にとって息抜きしたいという気持ちも、娘の留学のコネ探しに奔走する気持ちもわかる。
そして、愛しい、愛しい娘。ケンブリッジ大学に行けそうなくらい頭もいい、見た目美人ではないが身体は肉付きがよく(このルーマニアではお痩せより少し小太りに魅力があるようだ)、感じの良い娘さんだ。
その娘さんもイケメン彼氏がいて、イギリスに行けば別れなければならないし、彼氏と結婚するならこの国でずっと暮らすのも「残念」な気持ちでもある。
そんな状態の中で起こる「暴漢」に合う。犯人はわからないままだ。突然、進むべき道を遮るような出来事。これが、この国の状態をいみじくも表しているような気がしてならない。
☆そういえば『私の、息子』もルーマニア映画だった。家庭持ちの息子の起こした交通死亡事故をお金で解決しようと奔走する大金持ちのママ。この家庭は上の上だったと記憶している。