東京最終日は浪速千栄子さんの特集を観た。オロナイン軟膏のホーロー看板の浪速千栄子さんだが、本名が南口キクノ(ナンコウキクノ)ということでCMへの出演したらしい。
この時代のどんな映画でも、この方が出てくると映画内容そっちのけで見入ってしまう。
🎬『女ばかりの夜』田中絹代監督/1961年
昭和33年に売春防止法が出たが、そんな中でも売春はなくならなかった。検挙された女たちは更生施設に入れられて生活指導や技術を身に付けて社会に出て行く。白菊婦人寮もそういう女たちを受け入れる施設で、数十人の女たちが収容されていた。
彼女たちは寮母(淡島千景)の熱心な指導で、規律ある生活を送っていた。模範生の邦子(原佐知子)は個人商店の酒屋に奉公するが…。
女優の田中絹代さんが監督。去年のあいち国際女性映画祭で上映されたのだが、時間が合わなくて観られなかった作品。
世の中の冷たさは当時としては当たり前だと思う。真面目に生きている家庭だったミッキーの実家も中学2年生で父が亡くなり、母が歯を食いしばって4人の姉妹を大学まで出してくれた。そんな時も縁談、就職は片親ということで、後から聞く話ではあったが、母は冷たい仕打ちにあっていた。まして売春ならなおさらのことだ。
だから映画として特別な思い入れはないが、浪速千栄子さんがレズビアンで登場なさるのには驚いた。始め、おさげ髪の女が後ろを向いていて、名前を呼ばれて振り返る、会場から「わぁ」という声や笑いが起きた。ミッキーも思わず叫んでしまった。歳をとっているが心は少女という趣の千栄子さんだ。この一瞬で観て良かったなぁと思った。
🎬『猫と庄造と二人のおんな』豊田四郎監督/1956年
戦後間もない大阪が舞台。甲斐性なしの怠け者・庄造(森繁久彌)は、猫のリリーに異常なほどの愛情を注いで飼っていた。家業は小さな荒物屋。この家を仕切るのはしっかり者の母親(浪速千栄子)だ。
働き者の嫁・品子(山田五十鈴)を何を思ったのか一方的に追い出してしまう。庄造も好きな女・福子(香川京子)がいるので止めることもしない。
好きな女は、この家の地主で大金持ちの娘。行儀の悪い女で家事もやらないこの娘のことは自由気儘にさせていて、上げ膳据え膳で機嫌までとっている母親。
庄造の周りには3人の女がいる。題名の二人は間違いじゃないかと思った。お金、お金の浪速千栄子、追い出されて悔しいのと元亭主に未練があるギスギス顔の山田五十鈴、はすっぱで行儀の悪い香川京子、監督さんは思い切った女優選びをなさったものだ。
庄造のかわいがるリリー猫も彼にとって女同様、いや、それ以上の「女そのもの、理想の女」って思うがどうだろう。原作が谷崎潤一郎。読んでみたくなった。