1925年生まれ、今、90歳になる津端修一さんは、日本のいろいろな場所で団地の設計をした建築家。1955年、修一さんは出来たばかりの日本住宅公団に入社する。名古屋市の郊外、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの計画責任者としてこの地に来た。
山の尾根に沿って木々を残し、自然との共生を目指すニュータウンを計画するが、高度成長期の流れや伊勢湾台風で家を失った人々の住まいなどで、山を平坦にして団地群が建ち並んだ。
このドキュメンタリーは妻・英子さんと共に約50年の間に自宅周辺の里山の回復に取り掛かかり、数十種の野菜や果実を栽培する津端夫婦の姿を追ったもの。
会場はほぼ満員だった。
自然と共存すると言うと、とてつもなく大きいことを考えてしまうが、このドキュメンタリーは毎日コツコツと自分にあった時間で進んでいっている。
夫婦は高蔵寺の団地に住んでいたが、別に300坪の土地を買っていろいろな木々を植えて、野菜を作り始めた。その一つ一つに気の利いた言葉を添えた手作りの小さな看板を立てている。「ここは踏まないでね イチゴの苗」などと書いてある。
自然との調和で大きな場所でなくて小さい庭先にも木を1本、2本と植えてそばにちょっと野菜を作る。なん軒かがそうすると街全体が森の中に点在したように家々になると、嬉しそうに語っていた。
女優のメラニー・ロランが監督している『TOMORROW パーマネントライフを探して』でも小さい農園のやり方が出ていた。国は違うが、気負わず自然と共に生きていく人間本来の姿が描かれていた。
ナレーターは樹木希林。