今日は名古屋の試写室に伊勢真一監督が来場された。穏やかなで訥々とお話される監督さんのお人柄が『妻の病ーレビー小体型認知症ー』『ゆめのほとりー認知症グループ福寿荘ー』に表れていた。この二つの作品は今新宿ケイズシネマで上映中。2本続けてご覧になることをお薦めする。
🎥『妻の病ーレビー小体型認知症ー』伊勢真一監督/87分
高知県南国市で小児科医を開業する62歳の医師・石本浩市の妻・弥生さんは「レビー小体型認知症」という病気を患っている。石本さんと幼なじみの弥生さんは50代からは若年性の認知症になり、10年間、夫婦で病と闘い続けてきた。
小児科医の石本氏は子どもの診察を丁寧に優しく、時には冗談を言って扱いがとても上手だ。そんな気さくな反面、ご自身は若いときから鬱病を抱えている。どんなに妻を頼りにして地域医療の取り組んでいたのかがわかった。
弥生さんの表情は一見穏やかに見えるが、「自分はどうしてこうなってしまったのか」「世話をかけていてすまない」という気持ちが、断片的な言葉などでわかる。夫は嫌な顔一つしないで妻の面倒を見ている・・・それが、かえって辛くなってしまった。
病気と寄り添ったドキュメンタリーではあるが、固い愛情で結ばれた夫婦愛の作品だと感じた。
🎥『ゆめのほとりー認知症グループ福寿荘ー』伊勢真一監督/85分
北海道札幌市にある福寿荘は、「一人を大切に」「支え合う心」「安心して暮らせる」をモットーに武田純子代表が2000年に立ち上げた認知症グループホーム。ここでは様々な認知症の人たちが共に暮している。
一人ひとりの動きにゆっくりカメラを向けている。慌てて何かをする場面は一箇所もない。お年寄りは時々カメラをチラッと意識している。その意識が良い結果となってお顔ににこやかな表情が出始める。
場所は雪深い北海道だが、ここだけは温かい空間だ。お年寄りは時には思い思いの言葉をつぶやき、懐かしい歌をとびとびに歌い、自分の世界に浸っている。
その世界から、時には飛び出して他者との対話に発展する・・・。認知症でもいろんなことがわかっているが、それを伝えられないもどかしさがある場面もあったが、ゆっくりゆっくり時間をかけて寄り添うことによって「伝えたいこと」がわかってくる。
お年寄りの方もケアする人たちも、そしてこれを観ている側も「生きている」ことを実感させてくれたドキュメンタリーだった。