『ヴィヴァアン・マイヤーを探して』ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル監督/アメリカ/83分/10月10日より渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順次ロードショー公開(名古屋栄名演小劇場11月14日公開)
2007年。シカゴに住むジョン・マルーフは、シカゴの古い町並みが映った写真を集めるために、オークションで大量の古い写真のネガを380ドルで買った。主に写真は街中の人々を撮ったもので役に立たず、そのまた物置に入れておいた。
だが、気になって、その一部をブログにアップしたところ、次々と熱狂的な賛辞が送られて来た。撮影者であるヴィヴィアン・マイヤーの名をネット検索してもヒットしなかった。
彼は彼女の残した写真やネガ、映像フィルムなどを買い集めていたが、2年後の2009年に再び検索したところ一つだけヒットした。それは彼女が数日前に亡くなったという死亡記事だった。
その後、ジョン・マルーフは彼女を知る人物を捜し当てたが…。
すごい人生のドキュメンタリーと言う以外に言葉がない。すぐに思い浮かんだのは『非現実の王国でヘンリー・ターガーの謎』というドキュメンタリーだ。
写真家ではなく小説と挿絵の膨大な遺品だったが、このターガーも秘密主義で死ぬ前の入院時に大家に「家の中の物は捨ててくれ」と言っただけだ。ターガーの人生もすごいが、女性であるヴィヴィアンの人生も理解しがたいが「独自の人生を歩んだ」幸せなものだったと思った。
晩年の浮浪者のような暮らしも、なぜこれほどまでに優れた写真が撮れたのかも、ドキュメンタリーを観ただけではわからないことがたくさんあったが、一枚、一枚お写真に魅了された。
※87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。