『草原の実験』アレクサンドル・コット監督/ロシア/97分 9月26日よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次ロードショー公開
広大な草原にぽつんとたっている粗末な家。そこには素朴で美しい少女・ジーマ(エレーナ・アン)と、父親トルガ(カリーム・パカチャコーフ)は、静かに暮らしていた。
父親は飛行機の操縦の夢がかない喜んでいる。少女はラジオから流れる音楽に聴き入る。
少女には幼なじみの青年カイスィン(ナリンマン・バクブラートフーアレシェフ)、水を貰うために立ち寄ってジーマにカメラを向けたマクシム(ダニーラ・ラッソマーヒン)がいる。
題名から想像すると何となく「こう来るんじゃないか?」とは思っていた。台詞なしで淡々と続く中、少女を取り巻く二人の青年の「静かな奪い合い」始める。
ゆったりとしたシーンだが退屈とは無縁だ。説明などは一切ないが、観る画面、観る画面が画集を見ているように感じた。そして問題の最後で、音と映像から来る圧倒的なこのシーンで言葉を失った。
☆ソ連の核実験は1949〜1989年にかけて、カザフ共和国のセミパラチンスク核実験場(現カザフスタン北東部)で468回の核実験が行われた。1995年に解体されたが、今なお周辺では放射能の高汚染地域が残っていて健康被害も続いている。実験のほとんどは住民の避難勧告はなかった。