時は1977年。世界の喜劇王がクリスマスの朝に死去。そんな頃、刑務所を出所した憎めない小悪党エディ(ブノワ・ポールヴールド)は、親友オスマン(ロシュディ・ゼム)のところに住まわせて貰っていた。
オスマンも貧しく、妻は病気で手術代が工面できない、幼い娘の夢である獣医も諦めてもらうしかない状態だ。
テレビではチャップリンの思い出の名シーンなど死を悼む映像が流れている。墓はすぐ傍だ。エディは突然「チャップリンは俺たちと同じだ!お金を借りよう!」と閃く。
人生どん底の2人が天国の喜劇王に「どうか助けてくれ!」とばかりに棺桶を掘り起こす。簡単に思えた作業に手こずり、身代金を要求するが相手にされず・・。
監督・脚本は『神々と男たち』のグザヴィエ・ボーヴォワ監督。『マリー・アントワネットに別れをつげて』ではルイ16世を演じている。音楽は『シェルブールの雨傘』で知られる映画音楽界の巨匠ミシェル・ルグラン。
こんな事件があったことなど知らなかったが、映画で描かれていたのが事実なら、チャップリン家の脅迫電話の毅然とした受け答えや、罪は憎むが人は憎まない態度は立派だと感銘した。
この作品にはチャップリン家が邸宅や墓地を提供。孫娘のドロレス・チャップリンは未亡人役を、息子のユージン・チャップリンはサーカスの支配人役を演じている。
☆チャップリン家の庭の中央に、満開の桜があった。日本びいきだった亡き主人を悼むように咲いているようだった。