セルゲイ(グレゴリー・フェセンコ)は聾唖者専門の寄宿学校に入学する。その学校では公式祝賀会が開かれていて少女が花束を来賓に静々と差し出している。厳粛な中に和やかな雰囲気が流れている。
セルゲイ青年は自分の部屋に落ち着く暇もなく手荒な歓迎を受ける。容赦しない暴力だ。始めこそ様子がわからずおどおどしていたが、体が頑丈で意外に強かったため手荒な仲間の一員に組み込まれてしまう。
だが、このグループはただの不良グループではない。学校の作業指導員も黙認(いや、加担もしている)している裏組織の族(=トライブ)であった。
2014年カンヌ国際映画祭で批評家週間「グランプリ」を含む3部門で受賞した作品。覚悟してご覧いただきたい。
セルゲイはこの凶悪な暴力グループで次第に力をつけて行く。やる仕事といえば主に「売春」だ。聾唖専門の寄宿学校で?と思うが、どんなことでもあまり驚かないミッキーおばぁもこれには驚愕した。
驚愕のあれこれは書かない。台詞、音楽は一切ない。手話のみ。もちろんウクライナの手話だと思うが、一点のくもりもなく「わかる」作品。
一体、日頃観ている映画は何なんだろう・・・例えば、台詞、字幕、音楽などが、母親が赤子に固い食べ物を噛んでやり、咀嚼しやすいように口に入れてやる行為のように思えた。
それに慣れきったところにこの作品を観る、否、「見つめる」。だが、演じている者は「こちらに伝えよう」などは微塵も無く「相手に伝える」「自分の感情を手話でぶつける」という行為を、わき目もふらずにやっているのだ。
主演のグレゴリー・フェセンコをはじめ出演者はすべて聾唖者を起用。これを観ずにして今年のベストテンは語れない!