50代の夫婦のブリジット(イザベル・ユペール)とグザヴィエ(ジャン=ピエール・ダルッサン)は、ノルマンディーで酪農を営んでいる。仕事はまずまずで、子供も親元から独立して、夫婦だけの平凡な毎日が続いていた。
ちょっとお茶目心のあるブリジットと生真面目で無骨な夫。恋愛結婚で結ばれたが、この頃は倦怠期なのか会話も弾まない。
そんなある日、パリから姪のマリオン(アナイス・ドゥムースティエ/隣家が実家)が若者たちと帰ってきてパーティが開かれ、ブリジットも招待される。そこで25歳の魅力的なパリジャンのスタン(ピオ・マルマイ)に出会う。
スタンとの楽しいひと時は彼女の「遊び心」に火をつけてしまう。ブリジットは夫に「なかなか治らない湿疹を医者に見せる」と嘘をついてパリへと出かけていく。
この作品を観た後、ポッと体温が上がったような気分になった。興奮した熱の上がりかたではない。温かい綿で包まれたような感じになった。
これは2014年のフランス映画祭で満員になった作品。これは観ていなかった。
いつも気難しい役が多いイザベル・ユペールさん。ここでは平凡な毎日を送っている主婦が夫に嘘をついてまでパリに出かけ、いろんな出来事に遭遇して「本当に大切なもの」に気づくまでをゆっくり丁寧に描かれている。
中年ご夫婦を主人公にした映画で、こんなに毒気がないのも珍しい。それでいて奥が深いし、男のアタフタぶりや狡さも適当に混じっている。
こんな「あっさり風味だがコクがある」作品を作る監督さんはきっと女性監督か、老練の監督さんか、と調べてみたら、フランスの若い男性監督・脚本だった
料理には「箸休め」的なものがメイン料理の間に出てくる。映画でもミッキーおばぁのように1日3本観るときや、映画祭で続けて4.5本の時など、間に気分を休めたい「箸休め」映画があると、うんと活力が湧いてくる。だが、気分を休めたい=寝てしまうが多く活力が湧いてくるのは少ない。年に3本あるかないかだ。
登場人物でこの酪農家の元で働く男(お名前がどこにも書かれていない)の台詞がとってもいい!この台詞で夫はホッとしたりハッとしたりする。でもここでは書かない。是非とも劇場でお聞きください。