
東北のとある村「小森」に住むいち子(橋本愛)は、一度は都会に出て好きな男と暮らしてみたが、思うようには行かず1人で戻ってきた。
生活の糧を自分の労力と周囲の人の助けを借りてどうにか1人暮らしも慣れてきたころ、5年前に突然失踪した母・福子(桐島かれん)から手紙が来る。
母親が作ってくれたいろいろな食べ物をいち子は思い出しながら作るが、ふと「母と私は本当に家族だったのだろうか・・・」と気持ちが揺れ始める。
「夏・秋」に続いて「冬・春」の公開が待たれた。山里の一人暮らしがこんなに手緩いものとは思ってはいないが、それでも自然の営みとその土地に住む人々の知恵が結集した作品に魅入ってしまった。
いち子こと橋本愛の日焼けしたお顔や、お百姓をして荒れた手(つくしの袴取りには指先が汚れていたが)などは「無理」な注文だろうが、この役は橋本愛さんにとって大きな転機になったに違いないと思った。
クリスマスケーキならぬ「甘酒とカボチャ」を使って作った3色ケーキ。納豆もち、ふきのとうでつくるフキ味噌、干し柿、シミ大根、ご近所さんからいただく手作りの素朴な料理。
親友キッコ(松岡茉優)とユウ太(三浦貴大)が時々寄ってくれる。特別、困ったことも起こらず淡々と過ぎていくかに見えたが・・・いち子の人生の模索が始まる。
おさまる所におさまった最後だったが、会場はいち子の作る美味しい食べ物から立ちのぼる湯気の中で、幸せのおすそ分けをいただいているような雰囲気だった。