
1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、子どもはいないが商社勤務の夫(田辺誠一)と平穏に暮らしていた。パートから契約社員になった「わかば銀行」でも仕事はやりがいがあって毎日が充実していた。
顧客の独居老人・平林(石橋蓮司)の家で会った孫の大学生・光太(池松壮亮)と偶然に駅などで度々あったことがきっかけで愛しあうようになる。彼は大金持ちの祖父から大学の授業料を貸してもらえなくて退学を決意していた。
そんな時、顧客回りの帰り道に寄った化粧品屋で預かり金の中の1万円を使ってしまう。すぐに戻すが、これが全ての始まりであった。
怖かった

人が殺されたり、殺したりするなどちっとも怖いとは思わない。だが、この真面目で几帳面な派遣銀行社員・梨花の行動には寒気がした。
自分の中にある「やっちゃいけない、きめごとを守らないといけない…」をバサッと「無視」して「人生という道のガードレール」をひょいと飛び越えたくなる気持ちを誘発してくるのだ。だから怖いと感じた。吸い込まれる怖さだ。
お金はあるところにはうんとあって、いま、いくら貯蓄があるなんてわからないほどだ。そんな顧客たち信頼し切って任せてられている梨花は、いろんな手口で不正をしていくのだが、銀行業務の盲点、人を信じ込む盲点など赤裸々に描かれていた。
女優さんたちが皆、存分に実力を発揮していた。特に若い窓口業務の大島優子、呆けた独居老人の中原ひとみが素晴らしかった。
吉田大八監督は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でデビュー。『クヒオ大佐』『パーマネント野ばら』『桐島、部活やめるってよ』の方だ。