
カンボジア、ポルポト政権の時代の「これが真実」と伝える映画。素朴な粘土細工の人形、ジオラマと、当時の残った記録と合わせて作られた作品です。
ナレーションがフランス語。カンボジアの言葉ではない解説で淡々と語られます。もし自国の言葉で伝えたら、悲観、絶望、喪失感などが観客にズッシリと伝わるのを間接的にわざと和らげていました。それを比喩するようなナレーションの台詞が実際にあります。
美術館の展示物ような人形達が実際こうであったと配列され、抑圧された主人公のカンボジアが行った事を伝えていました。
美術品が伝える形式はドキュメンタリーとは違う手法で、フランス・イラン映画「ペルセポリス」 のアニメーションが解りやすく、イランの歴史を伝えているように、この映画も解りやすく印象に残る作品でした。

1944年8月から始まる双子の小学生ぐらいの男の子達が主人公。国境近くの母親の実家の村に預けられる事なり、農家の家では老婆が一人、働かざるもの食うべからずと、労働=食事と、娘である母と仲が悪く、悪態をつきます。
男の子二人は戦争時の環境で、慣れない農家仕事をし、悪態や暴力に慣れるよう努力して、1冊の日記にその事を綴って行きます。
ドイツ将校が一緒の敷地に住み、その後国へ逃亡。近くの収容所、ユダヤ人収容や地元民の差別。ドイツ撤退後にあるソビエトの進行。地雷に阻まれた国境越えなど、子供が正確に書いて残しなさいと言われる事実の数々は、残酷さを素直に受け止める子供達の柔軟さで受け入れ、怖さを通り超した物語の凄さになっていました。
直接戦うシーンなどはありませんが、戦下、人々が荒んだ気持ちになった有り様を映し出す映画でもありました。それを恐ろしいぐらいに淡々と、そして真に迫る映画になっているのでビックリした次第でした。
以前に、子供達を描いた「さよなら子供たち」監督ルイ・マル作品を観ましたが、変わらないぐらい、素晴らしい出来の「子供の視点」からみた戦争の真実を描いていました。