
フランスに暮らすオスマン(ソディギ・クヤテ)とドーバー海峡の島に住むエリザベス(ブレンダ・ブレッシン)は、ごく平凡な日々を送る人たち。お互い、今は赤の他人だ。
共通することはそれぞれの子どもがロンドンの大学で学んでいることだが、2005年7月に起きた同時多発テロのバス爆発で消息不明になってしまう。2人はそれぞれ必死で子どもを捜すが、偶然に子らが恋人だったことが判明する。
描いている内容は悲しい出来事だが、観終わった時の温かい気持ちは極上の作品だった。カソリック教徒のエリザベスは、はじめは宗教の違いや肌の色と、異様ないでたちのイスラム教徒のオスマンを疑りの目で見ていた。
「こんな人の息子と娘が恋するわけがない」「2人が同居していた?とんでもない!」などと言っているような目つきだった。演じるのは『秘密と嘘』のお母さん・ブレンダ・ブレッシン。
オスマンはいつも寡黙で堂々としている。わけあって6歳から会っていない息子に対して大きな悔いを感じているようだ。その思慮深い行動、眼差しで男優賞を受けている。
2人はいろんな困難な捜索の日々を送るうちに互いに励ましあうようになる。それは、常に杖をついて歩く足の悪いオスマンと歩きすぎて足が痛くなったエリザベスの歩調が一緒になってからだ。
2人の手の動きがとても良かった。絶望から顔を覆うオスマンの手、一生懸命、娘の捜索チラシを貼るエリザベスの手、もう一度観たいと思うぐらいだ。なぜ公開されなかったのか不思議だ。今こそ公開されるべき作品だと
