安政7年3月3日、江戸城桜田門外で大老の井伊直弼(中村吉右衛門)が襲撃され殺害される。一番近くにいる警護役である彦根藩士・志村金吾(中井貴一)は、主君を守り切れなかったことを悔やんだ。
金吾の両親は息子を恥じて自害。妻のセツ(広末涼子)にも実家に帰るように言うが飲み屋で働きながら金吾を助ける。そんな金吾に仇を討てと藩命が下る。
一方の水戸浪士・佐橋十兵衛(阿部寛)は井伊直弼の殺害後、俥引きになって生きていた。そして明治6年2月7日、仇討禁止令が出る。
原作は浅田次郎の短編小説「五郎冶殿御始末」の中の一篇。見応えあり。敵討ちの強い目的意識の中に、ほどほどの人間臭さや情があった。
なぜ、一番お傍でお守りするのに、刀を抜くときにもたもたとしていたのが気に入らない刀を何かで縛っていたのだが、なぜそうしたのか解せない。それも不穏な張り紙まであったというのに・・・。あそこですぐ刀が抜けたらと思うと(映画にはならないけど)悔やまれる。
江戸から明治へ移り変わる激動の時代を背景に、切腹することも許されなく仇討を続ける男と最後の仇の男との出会いが、この映画の山場。その場面の雪景色がとても良かった。
※金吾が上役の屋敷に行ったとき、その奥方がお茶を差し出すが、その時「一番ご苦労されているのは、あなた様の奥方ですよ」というような言葉を言った。この台詞ひとつでとてもいい気分になった。