
少年ヨヨは父親と二人暮らし。毎日ほとんどひとりぼっちだ。カントリーシンガーの母親はアメリカをツアー中でずっと家にいない。父親は、妻については語らない。時々、酒を飲んでヨヨを邪険に扱うが、それ以外は遊んでくれる良いパパだ

ヨヨは、どうして母は戻ってこないのか、どうして父は酒を飲んでは荒れているのか・・・ひとりで疑問や不安を抱え込んでいた。
そんな彼が近所の野原で、巣から落ちたカラスの赤ちゃんを見つける。ジャックと名付け、動物嫌いの父に隠れて家で育てることに・・・。
少年ヨヨを演じる子役を見つけたことは奇跡に近い。この子は演技をしていない。ちゃんと立場の理解はしているが、自分を「設定や会話の相手」にポンと預けている。
並みの子役でもこれはなかなか勇気がいること。何も考えていないのか、反対に恐るべき感覚の良い子役かどちらかだ。
鳥と少年の取り合わせだが、ここでは相手がカラスだから「気味悪い」と引いてしまうが、カラスの生態をヨヨが図書館で調べて、つぶやくように読みながら教えてくれたが、なかなか家族おもいの鳥だ。
そういう方法で「鳥」の生活も人間の理想としている生活も、そんなにかけ離れていることじゃないと教えてくれる作品だった。
お母さんのいない理由、父さんが時々荒れる理由、動物を飼っていけないという理由が次第にわかってくる。
ヨヨがいろんなことを承知して現実と向き合っていく様子を繊細な子どもの目線でカメラが捉えている佳品。
※父親に立ち向かっていく表情、


男と女が出会い、ひと目で恋におちる。愛し合い、やがて幸せな結婚をする。しかし年月が経つにつれ、嫉妬や疑念が夫婦の心を少しずつ引き離し、ふたりの関係に危機が訪れる。妻は愛人をつくり、それを知った夫は妻に怒りをぶつける。妻は家を飛び出し、夫は絶望し、互いの愛はもはや風前の灯火となり・・・。
いつの時代にも繰り返される男と女の物語は映画の普遍的なテーマだ。
そんなラブストーリーを監督のジョルジ・パルールフィは、古今東西の伝説的な映画作品から約500もの場面を綿密につなぎ合わせて表現したツギハギ・ムービー。
実験的映画と言える。
たとえば朝起きる場面、男がベッドで大あくびをする〜俳優が変わり、違う映画の男優があくびのあとに時計を見る〜また違う映画の一部分で、ガウンを着たまま洗面所に向う、鏡を見て髭をなでる男は、また違う映画の一部分・・・てな具合で延々続くのだ。
だからフィルム許可(約500作品もあるから)がほぼ貰えなくて、映画祭とか映画資料としてのみの上映になるらしい。お得感は普通の映画の500倍


ローマの重警備刑務所レビッビアで、受刑者たちによって「ジュリアス・シーザー」が演じられることとなった。そこで、出演者のオーディションが行われ、シーザーやブルータスなどキャストが決定。稽古が始まり、受刑者たちは次第に役柄にのめりこんでいき……。

ドキュメンタリー半分、映画半分だろうか。刑務所の中の俳優たちの面構え、声、堂々たる体格、個性的な性格・・・どれをとっても本物の演技者だ

台詞に感情移入し過ぎて、気持ちの整理がつかず中断する稽古。芝居で活躍しても個室(牢獄)に入ると罪人になる自分を、はじめて「自由がない、くやしい」とおもう苛立ちが赤裸々に表現されていた。
兄弟監督さんは数年前にイタリア映画祭で上映された『ひばり農園』の方だった。時々流れる


初恋の男性をずーっと愛し続けることが出来た女の子。
映画の中で、始めは15歳だった彼女の10年を描いているが、女性が最も磨きがかかるこの期間に、同じ表情、同じ考え、同じ好み(男の)ってのもなんだかいただけない

半年後に観たとは知らずにもう一度観た。
一度目はあいち国際女性だった。その時は「とろとろ青春映画で少し

初恋を10年以上も忘れられないで、そのゆれる気持ちを丁寧に描いている映画ってあんまりないように思う。毎日の暮らしの中で、何かの拍子でふっと思い出すシーンがあった。もちろん大人に成長するが、それでも変わらない「何か」を女性監督らしい目線で新鮮に描かれていた。

ストックホルムの郊外に暮らす一家が、何者かによって刺殺されるという事件が発生。助かったのは昏睡状態で発見された15歳の長男・ヨセフと、家を出て独立していた姉のエヴェリンだけ。
捜査に当たる国家警察のヨーナ・リンナ警部は、ヨセフから犯人に関する情報を引き出そうと催眠療法による供述を行うことにした。
その第一人者として有名なエリック・マリア・バルク(ミカエル・パーシュブラント/『未来に生きる君たちへ』)に協力を依頼するが、ある理由から彼は催眠療法をしないと硬く決めていた。
北欧もので『ギルバート・グレイプ』『サイダーハウス・ルール』の監督さんだから観たくなった作品。はらはら度は低いし、オチも想像がつくが、


19世紀のアイルランド。高級だが家庭的な小規模ホテル・モリソンズホテルでウェイターとして長年働いているアルバートは、誰にも言えない大きな秘密を抱えていた。貧しく孤独な生活から逃れるため、10代の時から男性として生きてきた女性だった。
そんなある日、ハンサムなペンキ屋のヒューバートがアルバートの働くホテルにやってくる。アルバートは彼に影響され、自ら築き上げてきた偽りの人生を崩したいと思うようになる・・・。
切ない映画だが、ホテルのみんなから「ミスター・アルバート」と呼ばれ、泊り客からも信頼の厚い彼女は、もらった給料も小銭のチップも床下に大切そうにしまい、本当に嬉しそうに

だが、この人の老後はどうなるのだろう、ずっとそのまま男性でいけるだろうか、はたして伴侶に求める「性」はどちらなんだ?と・・と他人事ながら心配になった。結末は観てのお楽しみ

※最優秀主演女優賞を獲得したグレン・クローズはもちろんのことだが、ヘレン役のミア・ワシコウスカの演技にも注目してほしい。パンフレットを読むと、映画化を、長年願っていたのは主演のグレン・クローズさんご本人
