
2年おきに山形ドキュメンタリーに通っている私にとって「何もたさない、何もひかない」ワン・ビン監督作品には特別な思いがある。
『鉄西区』(少し居眠りや途中で退場したりした)、『鳳鳴 中国の記憶』 『名前のない男』 『無言歌』 『三姉妹 雲南の子』などと比べると、新作の『収容病棟』はわかりやすい作品で興味深いものだった。
中国・雲南省の精神病院に収容されている患者たちの毎日を捉えたドキュメンタリーで、患者の表情は意外に明るい、いや明るいは語弊がある・・・彼らは思っていたより自由に行動していたし、それなりの自分の領域や過ごし方の癖はあるが、危害を加えたりする人もあまり見かけなかった。
監督のカメラは、許可を得て持ち込まれた。(最も深刻な患者棟ではないかもしれないが)閉鎖病棟ではあるが中は自由。
裸で走り回る者、男同士同衾する者、神に祈る者、食べ物に執着する者、階の下の女性患者と恋仲になる者でざわざわとしているが暗い雰囲気ではなかった。
ここには精神異常者ばかりではなく、立ち退きに応じない者や政治的陳情や一人っ子政策違反の人もいる。
「中国インディペンデント映画祭」で上映された中国の暗部が、彼らの口からぽろっと出てくるので「やっぱり本当だったのだ!」と思った。だから『収容病棟』何人かの患者さんは、その暗部を追求した勇気ある人とも言える。
文中「精神異常者の中には」でなくて「ここには精神異常者ばかりでなく」ですね。
そうですね。訂正しておきます。