『パラダイス三部作』ウルリヒ・ザイドル監督/オーストリア、ドイツ、フランス/2月22日より渋谷ユーロスペース他にて全国順次公開/名古屋は今池・シネマテーク上映日未定/http://www.paradise3.jp/
この作品は去年の東京国際映画祭の最終日に台風情報を気にしながら観た作品。
字幕を担当された斉藤敦子氏から「是非観て!」という言葉におされて3部作6時間半全部観たが、
私好みの「ゾクッ」がたくさん散りばめられていた。
監督前作『ドッグ・デイズ』も豊満な体の家政婦がストリップする場面が忘れられない。もう一度観たくてDVD屋で探したがなかった。
『パラダイス:愛』 120分
ここはケニアの美しい海辺のリゾート地。ヨーロッパから男性を求めて女性観光客がやってくる。
この「愛」は普通に売り買いされている。
テレサ(マルガレーテ・ティーゼル)は口やかましい母親。娘はのろのろと旅支度しているが、反抗的な態度はとってはいない。これからテレサはケニアに例の観光以外の目的でバカンスを過ごす。
だから娘と飼い猫を親戚のアンナおばさんに預けにいく。
オーストリアに住むテレサ、娘、おばさん(母の姉妹だろうか?どこもかしこも似ていない)の三人が、この三部作の主人公になるなどこの時は知るはずもない。
見どころは肥満中年・テレサの回春セックスシーンだが、男の行動や甘い言葉に「つかの間でもいいから信じたい」テレサと「一円でもたくさんお金を出させたい」と手ぐすねをひく黒人男性。
夢を見る女、現実を見る男、パラダイスはどこにあるのか・・・。
『パラダイス:神』113分
母テレサのケニア旅行中に、娘メラニーと飼い猫の面倒を見てもらったアンナおばさんの話。
アンナ(マリア・ホーフステッター/前作『ドッグ・デイズ』にも登場とても個性的な役で出ている)はレントゲン技師で一人暮らし。時間を見つけてはキリスト教の戸別訪問・布教活動をしている。
そこに、長い間いなかったエジプト人でイスラム教徒の夫が車椅子でふいに帰ってくる。
アンナは狂信的だ。異常だ。(でもその異常さは、テレサ母子が行った時には、ちょっときれい好きが高じた神経質な人ぐらいにしか見えなかった)
服を脱いでムチで自分の身体を打つのだ。キリスト像をはずして一緒に寝てゴソゴソもしている。
戸別訪問・布教活動先の家庭の様子、やり取りが数回出てくるが、手抜きなしで描いている。
※夫が帰れば自由はなくなり、食事や介護が待っている。彼女のパラダイスは終わってしまう。
「あ〜、私の生活もいつかこうなる・・・」と、一番堪えた作品。
『パラダイス:希望』91分
最後は肥満体の娘メラニー(メラニー・レンツ)が叔母さんの家からダイエット合宿に参加する話。
集まった少年少女は自由奔放。
彼女は合宿所の医師(40〜50歳か?)が好きになりストーカーまがいの行動をとる。そんな行動のどこに「希望」を見つけられるだろうか・・・。しばらくして分かった。
彼らを取り巻く大人たちの良識ある態度にそれを感じた。
誘惑に負けなかった医師、酒場の主が取った行動、教師たちの適度な罰し方など、
そんな大人の行いが彼らに「希望」の明かりをかざしているように感じた。