2024年11月05日
東京国際映画祭2024『港に灯がともる』『お父さん』
映画祭はまだ終わっていないが、今日でやめて目休めをしている。残念ながら上京して来た甲斐のあった作品をチョイスできなかった。運が悪かったのか、良い作品が少なかったのか……まあ運が悪かったことにしておこう。
今日アップする2作品はそんな中でも上出来の部類で、賞を取って欲しいと願っている。
🎬『港に灯がともる』安達もじり監督、脚本/119分/Nippon Cinema Now/来年1月公開予定
1995年の震災で甚大な被害を受けた神戸の長田区で暮らしていた在日韓国人・金子家の娘として生まれた灯(あかり)は、両親から家族の歴史や震災当時の話を聞かされ続けていたが実感は持てず、その話を聞くたびに「孤独と苛立ち」にかられていた。
震災で仕事を失った父・一雄は家族と言い争いの日々。両親は離婚の話が進んでいて家にはギクシャクとした冷たい空気が流れていた。
そんな中、結婚を控えた姉・美悠が日本へ帰化しようととしたことで、家族の間が今まで以上に厳しさが増していって……。
灯(あかり)を演じた富田望生さんから目が離せなかった。
民族差別の中で生きて来た祖父母、両親。そし震災を知っている両親の家庭で、その話題や苦労の愚痴が出ても、黙って聞くしかなかった灯。
そんな疎外感が原因かは定かではないが「死にたい」とつぶやくようになる。精神科に通ったり、話をじっくり聞いてくれるグループに入ったりして、自分でどう生きていくかを模索している。
そんな彼女を、時間をかけて「見つめる」ように撮っていて、長いワンシーンがとっても慈愛に満ちていた。最後のシーンも見事だった。
🎬『お父さん』フィリップ・ユン監督、脚本/香港/131分/コンペティション部門
香港のツェンワンで母親と娘が惨殺される事件が発生。殺した犯人はなんと15歳の息子(ディラン・ソウ)。
被害者の夫で、も父であり、加害者の父でもあるユン(ラウ・チンワン)は、こんな悲劇を招いた原因は何だったのかを究明するかのように、裁判を傍聴し、収監中の息子との対話を試みる。
これは香港で実際に起こった事件で監督さんは実在の父親に何回も話を聞いて制作している。
加害者の父親、被害者の夫、父親という複雑な立場をラウ・チンワンが見事に「生身の人間」として演じていた。
こういう悲惨で救いようがない事件は、どこの国においても起こり得ること。
本当のところはもっともっと「人に言えない苦しみ」があったと思う。
どうして起きたか、何が原因だったかがわからないまま終わったが、「わからない」のも含めての事実だから、物足りなさは感じなかった。