🎬『箱男』石井岳龍監督/120分
ダンボールに体ごとすっぽりと入って、街のいたる所をさまよい、小さくあけた覗き窓から世界を覗いて、妄想をノートに書き留める「箱男」。それ人間の営みのすべてから完全に解き放たれた存在だった。
カメラマンの「わたし」は街で見かけた箱男に心を奪われ、自らもダンボールを被って箱男として生きることにした。
そんな彼に、数々の試練と危険が襲いかかる。
安部公房が1973年に発表した同名長編小説を、石井岳龍監督が映画化。
1997年に映画の製作が決定したが、クランクイン直前に撮影が中止。27年の時を経て実現した作品。
27年前の企画でも主演予定だった永瀬正敏が箱男を演じ、箱男の存在を探ろうとするニセ医者役に浅野忠信、完全犯罪に利用しようとする軍医に佐藤浩市、誘惑する謎の女・葉子に白本彩奈が競演。
今の「閉じこもり」か、と思ったがダンボールの穴から見つめているのは、まさに「人間」で耳にした言葉や思ったことを短く書き留めている。
箱に入っている時のドロっとした孤独な雰囲気と、人と関係を持つ時の「おとなしげな男」を上手く演じ切っていた。