🎬『すべての夜を思いだす」清原惟監督、脚本/116分/東京では3月公開、全国順次公開/名古屋は今池ナゴヤキネマ・ノイにて6月8日公開。
高度経済成長期の入居開始から50年がたった多摩ニュータウン。公園と団地と一軒家がどこまでも続く広々とした街には、静かでのんびりとした時間が流れている。
そんな風景も中、誕生日を迎えた知珠(兵藤公美)は、友人から届いた引っ越し通知のハガキを頼りに、ニュータウンの中を歩いている。
団地内のガス検針員をしている早苗(大場みなみ)は行方不明になった老人と出会う。
大学生の夏(見上愛)は、亡き友人が撮った写真の引換券を持って友人の母に会いに行く。
それぞれの理由で街の中を移動する3人の女性たちは、人気のない街で、出逢うべき人の面影を追っている。
この映画を見て、地元愛知でも2017年公開のドキュメンタリーを思い出した。
高蔵寺ニュータウンの設計を任された津端修一さんは妻の英子さんとこの地に50年間暮らしている。
ともに高齢で、敷地内作るで育てた野菜や果物で料理を作り、高度成長期から現在に至るまでの生活から、本当の豊かさを見つめるドキュメンタリー。
『すべての夜を思いだす』はドキュメンタリーとは違うが、取り残された「ニュータウン」の「今」を3人の女性を通して的確に描いている。女性たちも見ようによっては「取り残され」感がある。でも各々にふりかかる「思うようにはならない」を深刻にならず受け止めている。
セリフの間合いの取り方、風景のすみっこに映る人影などが、観ている者の気持ちに「ちょっと引っかかったり」して面白い作りになっていた。