1位
🎬『Pearl』タイ・ウェスト監督、製作、脚本、編集/アメリカ/103分
1918年。アメリカ・テキサス州のとある田舎町。パール(ミア・ゴス)は戦地に行った夫を待ちながら、厳しい母親と車椅子で身動きできない病気の父親と人里離れた農場に暮らしている。
毎日、毎日、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。
そんな彼女の息抜きは映画鑑賞。パールはいつか自分も華やかな世界で輝くことを夢見ていた。だが、日頃の溜め込んだストレスのせいで彼女は動物を殺すなどの残虐行為をするようになって、いく。
そんなある日、町の映画館の映写技師(デビッド・コレンスウェット)と出会い、夢の実現への思いを抑えきれなくなっていく。それと同時に暴力性までが一気に爆発してしまう。
シドニーでこの映画を観たが思い違いもあって恥ずかしい限りだ。でも是非観ていただきたいホラー。最後のパールの独り言のシーンが無くなっていたの残念。
映写技師役のデヴィッド・コレンスウェットが次期スーパーマンに決定‼️
★ミア・ゴスに主演女優
★監督賞
2位
🎬 『呪餐 悪魔の奴隷』ジョコ・アンワル監督、脚本/インドネシア/119分
1955年。ジャーナリストの中年男ブディマン(エギー・フェドリー)は車に強制的に乗せられレンバンの山奥に連れて来られた。着いたところは白い建物で顔見知りの警察署長が申し訳なさそうな表情を浮かべて待っていた。
やむおえない事情で彼に内密の頼みごとがあったらしい。まずは見せたいものがあると白い建物の内部に案内された。それは想像すらできない光景だった。
明日からレンバンで重要なアジアアフリカ会議があるので「このこと」は発表できないが、 小さな新聞社だけ「都市伝説」のようにしてひっそり公表してほしいと頼まれた。
そして 時代はかわり1984年。長女リニ(タラ・バスロ)と弟トニ(エンディ・アルフィアン)と末の弟ボンディ(ナサール・アヌズ)と父親バフリ(ブロント・パラレ)の4人家族は、北ジャカルタにある公営マンションに住んでいた。この土地は水はけが悪く、金持ちは住まない地域でだだっ広い土地に14階建てのマンションがあるだけ。
住んでいる人は極貧ではないが中流以下の庶民ばかりだった。このところ、お化けが出るとか、ゴミのダストシュートの奥から人の声が聞こえるなどの噂もあって……。
2017年のインドネシア映画「悪魔の奴隷」の続編。ミッキーは観ていないがこれだけでも200%怖・楽しめた。
世間では2000人の犠牲者が出ている連続殺人事件が起きている中、リニの高層アパートではエレベーター落下事故が発生して数十人が死亡。さらに追い討ちをかけるように大嵐になって下層階は水浸し、停電してしまう。
最初のシーンの死体累々画面には鳥肌がたった。発見した管理人は一瞬に白髪になったぐらいの凄さ。当分このシーンの整然とした「きみ悪さ」は忘れられない。
インドネシア歴代興行収入第3位。インドネシアアカデミー賞7部門にノミネート、世界各国の国際映画祭で物議を醸した大ヒットホラー❗️を是非ご覧いただきたい。
★作品賞
★撮影賞
3位
🎬 『PIGGY ピギー』カルロタ・ペレダ監督、脚本/スペイン/99分
スペインの田舎町で肉屋を経営する一家の10代の娘サラ(ラウラ・ガラン)は、クラスメイトから体型や引っ込み思案な性格で、酷いいじめを受けていた。家族はは口うるさい母親(カルメン・マチ)、妻に従順で穏やかな父親、弟の4人。サラは肉の部位の切り分け、ソーセージ作りなども手伝っている。
店の窓からは同級生たちが楽しそうにおしゃべりしたり、時には店で働くサラを見て嘲笑ったりしているのを、悔しい気持ちで眺めている毎日。
そんなある日、あまりの暑さにサラは一人で地元の川で遊泳が許可されている場所に出かけて行った。誰もいない時間帯と思っていたが、見知らぬ男が泳いでいた。そこに3人のいつものいじめっ子たちがやってきて、太っているサラを口汚なくやじって、溺れさせられそうになった。それだけではなく岸に置いてあった袋や洋服、バスタオルなど、全部持ち去られてしまった。
自分をいじめる同級生を目の前で誘拐された少女が究極の選択を迫られる姿を描いたスペイン発のリベンジホラー。
〜2023 年ゴヤ賞 最優秀新人女優賞受賞したラウラ。この少女のふくよかすぎる肢体を見ているだけで満足した。本物の身体だ。そこに食い込む水着の紐、いつも髪の毛の先を噛んでいる口元、眩しそうに陰から友だちを見つめる目……、
★ラウラ・ガランに新人女優賞
🎬『キラーカブトガニ』ピアーズ・ベロルゼイマー監督、製作、脚本、編集/カナダ/80分
廃炉となった原発が爆破処理されたカリフォルニアのとある海辺の町で、謎の行方不明事件が続発。白骨と化した人間が発見される。保安官は人喰いザメの仕業と疑ったが襲ったのはサメではなく、なんとカブトガニ。
それも放射能の影響で巨大になって凶暴化。1匹や2匹ではなく「カブトガニの群れ」が発生。
やがて1匹の殺人カブトガニがゴジラ級の大きさになって、町を破壊し始めて……。
サメよりも凶暴。放射能の影響で突然変異した巨大カブトガニが巻き起こす海洋モンスター映画 。
突然、人の顔にピターッと張りついてガブリガブリとうまそうに喰っているカブトガニ。ツッコミどころはあったが、そんなもの、次の「ギョ‼️」で忘れてしまう勢い。
憂さ晴らしにうってつけのこの作品を製作・監督・脚本・編集を一手に手掛けるピアース・ベロルゼイマー監督は初長編。完成までに6年をかけた作品。
★新人監督賞
★企画賞
🎬『呪呪呪 死者をあやつるもの』ヨン・サンホ監督、原作、脚本/韓国、イギリス/110分
閑静な住宅街で凄惨な殺人事件が起きた。被害者のそばに横たわっていた容疑者らしき男は既に死体で、調べてみると死後3カ月の死体だった。
そんな中、ジャーナリストのジニ(オム・ジウォン)が出演するラジオに、犯人を名乗る男から電話が掛かってくる。男は自分が死体を操って被害者を殺したと告白。ジニを名指しインタビューに答えるとまで言う。
ジニは警察と協力して事件の調査を進めるうちに、ある大企業の薬品会社の陰謀が関係していることに気付くが……。
オカルト要素たっぷりだけど、こうなるのも仕方ない「悪事」が隠されていて、ストーリー展開には無理がなく最後まで飽きずに観られた。
『新感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホ監督が原作・脚本だから面白いに決まっているし、持ち前のスピード感はさすがだった。
★脚本賞
🎬『ブラック・デーモン 絶体絶命』エイドリアン・グランバーグ監督/アメリカ
自分が勤めるニクソン石油会社の海底油田の視察とバカンスを兼ねて、妻イネス(フェルナンダ・ウレホラ)と子どもたち(姉オードリー/ビーナス・アリエルと弟トミー/カルロス・ソロルツァーノ)と一緒にメキシコを訪れたポール(ジョシュ・ルーカス)だったが、港町は以前の賑わいはなく、寂れていた。泊まろうとしていた人気ホテルは廃墟となっていて、今更ながら予約しておけば休業のこともわかったのにと妻に叱られるポール。そこには小さな食堂が一軒あるのみ。
なぜかアメリカから来た一家に怒りのような目を向けてくる住民たち。居心地が悪かったが、油田の視察も兼ねていたので、妻子を小さな食堂に4、5時間居させてもらってポール一人でボートで沖に出た。
港に残された妻子は土地の男がオードリーにちょっかいを出したので、大金を使って船を出してもらいポールのいる石油発掘基地に向かうが……。
その港町の伝説の超巨大ザメ❗️と言われてもどんだけ大きいのか、観るまでは想像もできなかったが、モーターボート1台をひと飲み込みの迫力。沖にある油田開発の基地は3階建ての高さがあって頑丈にできているはずだが、サメが動けばそれが大きく揺れる。
そこには2人の男が生きていて、ポールで3人になる。そこに妻子3人がやってくるのだ。「あんなところに恐くて居られなかった、あなたはなかなか帰ってこないし」と泣きつく。小さな利口そうな男の子(表情もかわいい)はいろんなことに興味があって、土地の守り神の人形を持ってきたり、時々、救助の手助けになることを言ったりしていたが……、言えるのはここまで。
暑さしのぎにはピッタリな海洋サバイバルホラー。
余分『えっ?サメ男』グスタフ・リュングダール監督、出演/スウェーデン/63分のサメ映画も是非。珍品もの。
🎬『M3GAN ミーガン』ジェラルド・ジョンストン監督/アメリカ/102分
おもちゃ会社の女性研究者ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)は、人間そっくりのAI人形「M3GAN(ミーガン)」を開発している。ミーガンは子どもにとって最高の友だちであり、親にとって最大の協力者となるようにプログラムされている。
そんな彼女が、交通事故で両親を亡くした姪ケイディ(バイオレット・マッグロウ)を引き取ることになった。子育てなど経験のないジェマは、あらゆる出来事からケイディを守るよう、ミーガンにインプットするが、ミーガンの行き過ぎた見守り愛は、どんどん過剰になって……。
子どもを守るAI人形が引き起こす惨劇を描いたサイコスリラー。
https://docs.google.com/document/d/1oQ5-HEbxbyyKaLYUoqRr3vsfcuxOhLcABDGrY9J8tR8/edit
『ベニー・ラブズ・ユー』もお人形ホラーだ。ベニーはセサミストリートのようなお人形だが、ミーガンはお目々ぱっちりのかわいいお姉さんのようなお人形。
ジェマには懐かないケイデイもミーガンにはすぐ仲良くなって、いっときも離れないほど。ミーガンもケイデイの気に入らないことを排除するようになって、しまいには……、ストーリー展開は想像つくが、いとも簡単に「排除」してしまうので恐くなる。
こんな怖いお人形が子守りがわりに使うようになったら、世の中「死体累々」になってしまう。お年寄りの話し相手のミーガンならぬ「ローバン?」ぐらいが、ちょうど良いのではと思った。
🎬『ビデオドローム 4K ディレクターズカット版』デビッド・クローネンバーグ監督、脚本/アメリカ/89分/1982年
暴力やポルノが売り物のケーブルテレビ局を運営するマックス(ジェームズ・ウッズ)は、部下が偶然に傍受した電波から「ビデオドローム」という番組を知る。その番組は拷問や殺人といった過激な画像が生々しく映し出されていた。それを見た者の脳に幻覚を見せる危険なものであることがわかるが、マックスも均衡を失っていく。
鬼才デビッド・クローネンバーグが1982年に発表した「ビデオドローム」のディレクターズカット版。
40年前にこの斬新な映像に驚いた。主役を演じたジェームズ・ウッズがハマり役で現実と幻覚の間でどんどん「過激」になって行く様子が「きみ悪く」描かれていた。観ているこちらも戸惑ってしまった。
🎬『マッド・ハイジ』ヨハネス・ハートマン、サンドロ・クロプシュタイン監督、脚本/スイス/92分/7月14日よりヒューマントラストシネマ渋谷、センチュリーシネマにて全国ロードショー公開。
マイリ大統領(キャスパー・ヴァン・ディーン)が独裁者として君臨するスイスでは、マイリが経営する製造会社以外のチーズがすべて禁止されていた。
ある日、アルプスに暮らすハイジ(アリス・ルーシー)の恋人で、闇でチーズを販売していたペーター(ケル・マツェナ)が、ハイジの目の前で処刑される。さらに、ハイジのおじいさん(デヴィッド・スコフィールド)までがマイリの手下に家ごと燃やされてしまった。ハイジは敵を討つことを決意するが……。
『マッド・ハイジ』。これほどまでに凄い❗️とは思わなかった。上のアニメの写真に出ているキャラクター、ワンちゃんもみんな「イメージ」を変えて出てくる。
イメージが崩れるのは嫌な方は絶対、絶対観ないで。でもスプラッター好きの方は絶対、絶対、絶対観て‼️
★作品賞
🎬『イノセンツ』エスキル・フォクト監督、脚本/ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン/117分
夏休みにノルウェー郊外の住宅団地に、両親と共に引っ越してきた9歳の少女イーダ(ラーケル・レノーラ・フレットゥム)と、自閉症で口のきけない姉のアナ(アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ)は、同じ団地に暮らす少年ベン(サム・アシュラフ)や、女の子アイシャ(ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム)と親しくなる。
ベンは強く念じれば、手で触れなくても小さな物体を動かせる不思議な力があり、アイシャは自閉症のアナと離れていても思っていることがわかる能力を秘めていた。
北欧発の子どもたち4人のサイキックスリラー。
ほぼ宣伝や予告編もない作品だったが、4人の子どもたちが凄すぎる❗️それぞれがノルウェーのアカデミー賞と呼ばれている「アマンダ賞の最優秀主演女優賞や最優秀主演男優賞」にノミネート。
大規模な団地という場所には、地下、階段など、人が来ない、見えないところがたくさんあって、そこが大方の舞台。
そこでベンが中心となって危険な遊びをする。時には目を背けたくなる場面もある。
子がやることが人間の命まで脅かすものになってくるストーリーにホラー的な要素もたっぷりあって、ミッキーにとってちょうど良い暑気払いとなった。
★音響賞