🎬『理想郷』ロドリゴ・ソロゴイェン監督、脚本/スペイン、フランス/138分
スペインのガリシア地方の山間の村に、自然農法をしたいためにこの地に移住したフランス人中年夫婦のアントワーヌとオルガ(ドウニ・メノーシュとマリーナ・フォイス)がいた。夫婦は毎日、喜びを持って農作業に明け暮れていた。
だが貧しいの村人たちは、風力発電の地元誘致にやっきになっていて、それに反対する夫婦に暴力的な制裁をするようになる。特にすぐ隣の独身のアンタ兄弟の狂暴さには毎日の暮らしも脅かされて……。
これ、去年の東京国際で賞を取った作品。その時は『ザ・ビースト』(獣の意味)という題で、まさか理想郷という邦題で上映されるとは夢にも思わず劇場に行った。
見ごたえあり!山奥の田舎で「すぐ隣」なら歩いて10分くらい(もっとか?)という感覚だが、このお隣は庭続きでほんの2、3分。あまりの酷さにアントワーヌは小型ビデオカメラを買って応戦するようになる。
先日まで難民映画祭を見ていて、お互いに理解し合う難しさをわかってはいたが、平和の基は「隣人と理解しあい仲良くすること、全てそうなれば戦争は起きない」と本で読んだことがあった。まさに隣人とに諍いを描いたこの作品に「理解し合う難しさと、その反対の、難しい関係でも、叡智を含んだ一言で許し合える」糸口が描かれていて、稀にみる佳品だと感じた。
2度観したが、今日の方が深く捉えることができた。
★監督さんの前作は『おもかげ』 元夫と旅行中の幼い息子から電話を受けた母親は、息子が一人で海辺に取り残されていることを知る。10年後、息子が失踪した海辺のレストランで働く母親は息子によく似たフランス人の少年と出会う。これも好きな作品だった。