🎬『ひろしま』関川秀雄監督/109分/1953年
広島のとある高校。北川(岡田英次)の担任するクラスで原爆当時のラジオ放送を聞いていた大庭みち子(町田いさ子)は、突然、大声で叫び出した。彼女は原爆の白血病によって幼い時から苦しんでいたのだ。
クラスの三分の一は被爆者で、忘れる事の出来ない思い出だった。でも広島では原爆の悲惨さはだんだんと薄れていくばかりだった。みち子の姉の町子(松山りえ子)は疎開作業の最中に、米原先生(月丘夢路)と女学生たちと一緒にやられたのだ。みち子は爆風で吹き飛ばされ、弟の明男も黒焦げになって死んだ。

1953年の製作なので広島戦後の様子がそのまま映し出されていた。広島には七十年間生物は住めないし、草木は生えないと言われていたが、病院の庭に蒔かれた大根の芽が出ると原爆で入院していた人たちが歓喜の声を上げていた。
広島の惨状を経験した「広島市民」が演じている。辛い体験を演じる辛さを想像しながら観たが、実際に体験したからこそ伝えられる作品だ。
今は大きくなってテレビ放映される8月6日の式典も最初の頃は小さくひっそりと開催されていた。だが、そこに集う人は打ちひしがれるように頭をたれていた。