
🎬『それでも私は生きていく』ミア・ハンセン=ラブ監督、脚本/フランス、イギリス、ドイツ/112分
シングルマザーのサンドラ(レア・セドゥ)は、同時通訳の仕事をしながら8歳の娘とパリの小さなアパートで暮らしている。サンドラの実父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)はかつては哲学教師として生徒たちから尊敬されていたが、現在は病によって視力を失い、記憶も失いつつあった。
サンドラは母フランソワーズ(ニコール・ガルシア)と協力して父の介護をしていたが、父の変化を目前にして無力感にさいなまれていた。
仕事と子育てと介護に追われ、自分のことは後回しにしてきた彼女だったが、旧友クレマン(メルビル・プポー)と再会し恋に落ちるが……。

『未来よ こんにちは』や『ベルイマン島にて』のミア・ハンセン=ラブ監督が、父の病への悲しみと新たな恋への喜びという相反する感情に直面したシングルマザーの心の動きを、自身の経験を基に描いたドラマ。
なかなか時間が合わなくてうずうずしていた作品。この日『TAR ター』『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』とこれを観たが、『それでも私は生きていく』が一番良かった。
レア・セドゥの腰からお尻、太もものたっぷりした身体の線が目に焼き付いて離れない。服を来ている時はそう感じなかったが、子どもを一人か二人産んだような色気のある線だった。
ボケが進んだ父親は母親とは離婚している。父親には愛人がいて、愛人が世話しにくると、娘が行って世話するときには見せない嬉しがりようで落ち込んだり、クレマンが妻と自分の間を行ったり来たりする苛立ちを「自分の中でおさめよう」「大人の判断をしよう」と気持ちを沈めている様子を見事に演じていた。