2023年05月07日

イタリア映画祭2023(2)『無限の広がり』『奇妙なこと』

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土曜日は一日中映画祭にいて、4本見たが観客は100〜150名前後。昔の賑わいを知っているので驚くばかり。経済評論家がコロナ後から本当の不景気が始まるだろうと言っていたことが頭をよぎる。

『人間の値打ち』のパオロ・ヴィルズィ監督の新作『乾いたローマ』は3年間雨が降らないローマの群像劇。シルヴィオ・オルランド、ヴァレリオ・マスタンドレア、モニカ・ベルッチなどの主役級のスターが出ていて期待満々だったが、話が「小間切れ」すぎて頭が混乱。追いついていけなかった。3年間も雨が降らない設定も長すぎないか?(日本でも2ヶ月ほどまとまった雨が降らない時があったような気がする)作品は富める者、貧しい者をくっきり描かれていた。

🎬『無限の広がり』エマヌエーレ・クリアレーゼ監督、原案、脚本/94分/前作『海と大陸』

1970年代のローマが舞台。ローマに引っ越してきたボルゲッティ一家は夫婦間の愛情は冷めているが、かわいい3人の子たちがいて、どうにか家族の形態を保っていた。

12歳の長女アドリアーナ(ルアーナ・ジュリアーニ)はそんな両親の姿に家族崩壊の危機を感じていたが、自分の力ではどうすることもできないと悩んでいた。彼女自身も女ではなく男として生きたいという気持ちが抑えきれなくなっていた。

そんなある日、沼地に小屋がけをして住むロマの少女サラにアドリアーナは一目惚れをしてしまう。そして同じ頃、父親の愛人が妊娠したということを耳にして、衝撃を受ける母と子どもたちだった。


原題はL'immensità。1967年にジョニー・ドレッリとドン・バッキーが歌っていたカンツォーネ。この歌は世界で大ヒットして聞き覚えがあった。歌詞の持つ意味が深く胸に刺さった。

母親役にペネロペ・クルス。子どもたちを一心に愛する母親と、夫の浮気がもとで精神が不安定になる妻を、全身に悲哀をまとって魅せてくれた。

★エマヌエーレ・クリアレーゼ監督の自伝的な作品。自身が性転換して男性になったことを公表した。


🎬『奇妙なこと』ロベルト・アンドー監督、原案、脚本/103分/『修道士は沈黙する』『盗まれたカラヴァッジョ』

1920年。創作のスランプに陥っていた大作家・ピランデッロ(トニ・セルヴィッロ)は作家仲間の誕生日のためにシチリアに帰郷するが、幼い時から世話になった乳母の死を知って葬儀に参列したり埋葬に立ち会うことにした。

そこで昼は墓堀人、夜はアマチュア劇団を率いる二人の男(サルヴァトーレ・フィカッラとヴァレンティーノ・ピコーネ)と出会う。

ノーベル文学賞受賞作家ルイージ・ピランデッロ(戯曲『作者を探す六人の登場人物』)が主人公の喜劇。

正直に言うとトニ・セルヴィッロさんのお顔を見ると何故か睡魔に襲われるミッキー。ごめんなさい、トニ・セルヴィッロさん。この作品も最初ちょっとうとうと。

墓掘り人のコンビがとっても良かった。偉ーい作家先生とわかってから態度を変えて、是非僕らの劇を見に来てほしいと図々しく頼むのもおかしい。

100年以上も前に観客を巻き込んだ斬新な舞台は「金返せ❗️」「とんだ詐欺師だ❗️」「ブラボー❗️」などと真っ二つに評が割れるのも面白かった。
posted by ミッキー at 04:54| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする