アニメ映画ベストテン(1位から5位あり、その他は順位なし)
1位
🎬『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』木下麦監督、キャラクターデザイ/128分
個人タクシーの運転手として働く無口な男・小戸川(声:花江夏樹)は、他人と深く関わらないように生きてきた。しかしある人物をタクシーに乗せたことで、巷を騒がせる「練馬区女子高生失踪事件」に巻き込まれてしまう。事件には巨額の金を手にした男や売出し中のアイドルグループの少女たちの思惑が絡みあっていて……。
アニメ以外では成立しない作品で、最後の納得感が半端ではなかった。タクシー運転手が主役で鬱々とした表情やしゃべり方がよくて、状況の描きようもよかった。
キャラクター作画、脚本、編集をした方に頭が下がった。脚本は『セトウツミ』の漫画家・此元和津也が脚本を担当。何の前知識もないミッキーだが、大拾い物のアニメ作品だった。
監督賞 脚本賞
2位
🎬『FLEE フリー』ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス/89分
アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、幼い頃に父親がタリバンに連行された。面会は叶ったが3ヶ月後には居なくなってしまった。その後、やつれ切った母親と姉2人、下の兄と自分の5人家族は命がけで年月をずらして祖国を脱出した。
家族は離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへ亡命した彼は、勉学に勤しんで30代半ばには研究者として成功する。同性の恋人と家を買って一緒に暮らすまでになったが、
20年以上も抱え続けていた過酷な半生を、親友である映画監督の前で、静かにゆっくり語り始める。
20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえたドキュメンタリー。
これを観て、北朝鮮強制収容所の過酷な環境で生きていく家族の姿を描いた清水ハン栄治監督の長編アニメーション『トゥルーノース』を思い出した。q『FLEE フリー』もアニメだからこそ描くことができる過酷な現実を見せてくれた。
アニメ部分、実際のニュース映像などが上手く使われていたし、アニメーション監督のケネス・ラデケアさんの絵柄がとても良かった。
主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、アカデミー賞で史上初めて国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門ノミネートを果たした。
作品賞 アニメキャラクター賞
3位
🎬『マッドゴッド』フィル・ティペット監督、脚本、製作/アメリカ/84分
荒廃した未来。人類最後の男・ラストマン(アレックス・コックス)によって地底世界に派遣されたアサシンは、朽ちた地下壕やそこに棲息する不気味な生物をくぐり抜けた先に、化け物たちが巣窟化した「この世の終わり」を目撃する。
フィル・ティペット監督が『ロボコップ2』の撮影後にアイデアを思いつき「手作りの特殊効果」の製作を開始したが、時代の流れがCG映像に大きく転換したことで中断。それから20年後、ティペット・スタジオの若手クリエイターたちが当時のパペットやセットを倉庫の大掃除に発見。製作開始から約30年を経た2021年に完成したストップモーションアニメ。
『JUNK HEAD』(映画館で3回観た)をすぐに思い出した。同類の手作りアニメでどの画面を見ても「画面を止めて」じっくりと探ってみたくなった。これもちろん映画館大画面で観るのと止めながらDVDでじっくり見るのも楽しめる。
この世の地獄の果ての果てを映像化しているが、浮かび上がってくるものには「醜さ」はあっても「冷たさ」はなかった。
撮影賞
4位
🎬『かがみの孤城』原恵一監督/116分
中学生のこころ(声: 當真あみ)は学校に居場所をなくし、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が突然光を放ち、鏡の中に吸い込まれてしまう。
そこは、おとぎ話に出てくる城のような建物の大広間で、6人の見知らぬ中学生たちがいた。そこに、狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」(声: 芦田愛菜)が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在で、この城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠してある。見つけた人にはどんな願いでもかなえると言う。
直木賞作家・辻村深月の同名ベストセラー小説を『カラフル』の原恵一監督がアニメ化。
『カラフル』からの大ファン。今作も満足した❗️ストーリー展開もイチャモンなし。この監督さんのアニメにできる「影」が好き。声の方々も違和感なしで見られた。
ストーリーの先が見えているように感じる出だしだが、ところがどっこい、一筋縄ではいかない。最後まで好奇心いっぱいで見終えた。
小学生高学年以上なら老若男女問わず楽しめるはず。是非、家族でご覧いただきたい。
5位
🎬『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦監督、原作、脚本/124分
1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載されて、今も人気があるバスケットボール漫画「SLAM DUNK」を新たにアニメーション映画化。
バスケットボールが5人ですることすら知らなかった恥ずかしいミッキー。何にもわからなくても引き込まれた。アニメの絵柄は古風な感じでいて、動きは(きっと)バスケットボールの理にかなっている動き。どんなシーンのときでもアップで見せる顔の表情が生き生きしていた。
主人公の男の子の兄を亡くした過去、故郷にいる家族が振り返るように描かれていた。だんだんと彼の生い立ちがわかって、最後には……。あ、これ以上はかけないが、スクリーンは躍動感あふれる展開だが、会場は皆んな息をのんでしーーんとしていた
🎬『劇場版 からかい上手の高木さん』赤城博昭監督/73分
とある田舎町の中学校。隣の席の女の子・高木さんに何かとからかわれている男の子・西片。どうにか高木さんをからかおうとするが、いつも彼女にバレてしまう。3年生に進級し周囲が将来を考えはじめる中、2人の距離はいまだ友だちのまま。夏休みが始まる頃、2人は小さな子猫を拾い「ハナ」と名前をつけ、飼い主が見つかるまで神社の境内で世話することになった。
小学館「ゲッサン」連載の人気コミック「からかい上手の高木さん」を原作とした同名テレビアニメの劇場版。
山深い田舎町に住む中学生たちの純情そのもののアニメ。観ているうちに素直な気持ちになった。拾い猫の話にも高木さんと西片さんのその後も描かれていて最後まで楽しめた。
🎬『すずめの戸締まり』新海誠監督、原作、脚本/121分
九州で暮らす17歳の岩戸鈴芽(声: 原菜乃華)は、廃墟の扉を探しているというひとり旅の青年・宗像草太(声: 松村北斗)と出会う。なぜかその青年が気になって、彼の後を追って山中の廃墟にたどり着いたすずめは、そこだけ崩壊から取り残されたかのように存在する扉を見つけた。
その扉に手を伸ばすが、それがきっかけで日本各地で次々と扉が開き始める。扉の向こう側からは「災い」が来るため、すずめは扉を閉める「戸締りの旅」に出ることにした。
新海監督の『言の葉の庭』でファンになったが大作になるに従って「公開したら初日初回に」の熱は無くなったが気になるアニメ監督さん。
🎬『夏へのトンネル、さよならの出口』田口智久監督、脚本/83分
妹の事故死が心の傷となっている高校生・塔野カオル(声:鈴鹿央士)は、自分を曲げない強い態度の転校生・花城あんず(声: 飯豊まりえ)と田舎町の電車のホームで出会う。偶然にも二人は同級となるが、群れないあんずは1日目で孤立するがそんなのには頓着しない女子だった。
この田舎町には噂の「ウラシマトンネル」があって、中に入れば願いは叶うがほんの数時間が5、6年経ってしまうのだ。
カオルとあんずは、それぞれの願いをかなえるため協力することにしたが……。
第13回小学館ライトノベル大賞でガガガ賞と審査員特別賞をダブル受賞した八目迷の小説「夏へのトンネル、さよならの出口」をアニメーション映画化。
作品は時間経過の差がもたらす話で不変の愛を描いていてわかりにくい点はなかった。声の出演の主役二人はとっても良かった。でも声で気になった場面があった。駅のアナウンス、喫茶店のウェートレスの短いセリフの声色がとても気になった。「ちょっと印象がありすぎ」で自然ではなかった。
🎬『雨を告げる漂流団地』石田祐康監督、脚本/120分
姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽(声: 田村睦心& 瀬戸麻沙美)だったが、小学6年生になり、航祐の祖父・安次が亡くなったことをきっかけにあまりしゃべることもしなくなった。
そんな夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに取り壊しが進む「おばけ団地」に忍び込む。その団地はかつて航祐と夏芽が育った思い出の場所だった。航祐はそこで思いがけず夏芽と会う。夏芽からのっぽ(声: 村瀬歩)という謎の少年のことを聞く。すると突然、不思議な現象が起こり団地の周囲は一面の大海原になっていた。
海を漂流する団地で航祐たちは力を合わせて、サバイバル生活を送ることになって……。
9月16日に劇場公開とNetflixでも同時こうかい。珍しい公開方法だ。1回目は大画面で、2度目はNetflixで、というサービスだろうか。
声の出演も文句なし、海原を漂流する団地という設定が良かった。
🎬『神々の山嶺(いただき)』パトリック・インバート監督/フランス、ルクセンブルク/94分
記録上に残るエベレストの初登頂は1953年。しかしイギリス人登山家のジョージ・マロリーが1924年6月にエベレストの山頂付近で消息を絶っていることから、マロリーが初登頂を成し遂げていたのではないかとも思われていた。
そんな時、取材でネパール・カトマンズにいた雑誌カメラマンの深町誠は、土地の男から「マロリーの遺品であるカメラ」を買わないかと持ちかけられるが胡散臭く思い断った。が、すぐその後に、長い間消息がわからなかった孤高の登山家・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラをその男から奪っていく姿を目撃する。
羽生を見つけ出し、マロリーの謎を突き止めようと考えた深町は、羽生を追い始めるが、尋常ならざる執念で危険な山に挑み続ける羽生という男の人間性に次第に魅了されていく。
原作は夢枕獏の小説。それを谷口ジローが漫画化した山岳コミック「神々の山嶺」を、フランスでアニメーション映画化。
アニメで登山映画を作るとはなんだかお手軽……などと思っていたが、人間ドラマとしての要素が半分以上占めているので、こういうのも有りと思った。途中でアニメ云々のことは頭からすっぽりと抜けた。
ただ音楽がストーリーを先走って「あおっている」と感じた(あ、これはアニメなんだと感じる)部分が2ヶ所あったのが残念だった。