正月2日。8時ごろ起きてコーヒー☕️と昨日のお節の残りを温めて朝食。そこに初荷が届いた。いつも正月過ぎに送ってくださる方から丸餅。早速焼いて海苔巻きにしていただいた。感謝。
洋画ベストテン(順位なし)
🎬『スワンソング』トッド・スティーヴンス監督、脚本、プロデューサー/アメリカ/105分
かつては街一番の美容師だったパット(ウド・キア)は、今は引退して老人施設でひっそりと暮らしている。そこに以前長い間髪や化粧をした大女優のリタが亡くなり、遺言で死化粧はパットと言い残していたと弁護士が知らせに来た。リタとは良い別れ方をしなかったので即座に断るが、昔の色々のことを思い出すうちに気が変わって、サンダスキーの葬儀社へと歩き出した。
時代を遡ること約4、50年前のAIDSが恐れられていた時代の暗い思い出と現在のゲイの老人(実在した人)が描かれている。
その老人を演じるのはウド・キア。御年80歳前だから役柄とぴったり。装いもよれよれ寝間着からゴージャスなショー用の衣装まで彼の身体に吸い付いているように感じ、魅了された。
ウド・キアさんに主演男優賞 衣装賞
🎬『あのこと』オードレイ・ディヴァン監督/フランス/100分
1960年代、フランス。成績優秀な大学生のアンヌ(アナマリア・ヴァルトロメイ)は予期せぬ妊娠をし狼狽する。学位と未来のために今は産めない。中絶は違法で医者はその話になると相談にも乗ってくれない。アンヌはあらゆる解決策に挑むが……。
これは今年のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーが自身の経験を基に書き上げた「事件」が原作。フランスで中絶が違法であった1960年代の話で、ルーマニア映画『4ヶ月、3週と2日』より忘れられない作品になりそうだ。
アナマリア・ヴァルトロメイさんに新人女優賞
🎬『パラレル・マザーズ』ペドロ・アルモドバル監督、脚本/スペイン、フランス/123分
女性中堅写真家のジャニス(ペネロペ・クルス)と17歳のアナ(ミレナ・スミット)は、同じ日に同じ病院で娘を出産する。入院中から気が合って親しくなり、ともにシングルマザーとして生きていく2人は、再会を誓って携帯番号を教え合って退院する。
ジャニスは娘にセシリアと名付けて夢中で可愛がるが、たまに来る妻子持ちの彼は一目見るなり「誰に似ているのだろう」という言葉が気になってDNA鑑定を行ったところ、セシリアに血のつながりがないことが判明する。
そして1年後、ジャニスは近くにレストランで住み込みで働くアナに偶然会う。そして彼女の娘が突然死で亡くなったことを告げられる。
この映画には2つの視点があって、一つひとつが一本の映画になる重みがある。それは赤ちゃん取り違えの映画とスペイン内戦の映画。それが名匠ペドロ・アルモドバルによって見事に融合され、80年以上も土に眠る遺骨と産まれてきた子どもたちにまで繋がって「未来」に向かっていくことを見事に描かれていた。
作品賞
🎬『セイント・フランシス』アレックス・トンプソン監督/主演のケリー・オサリバンが脚本/アメリカ/101分
大学を1年でやめて、レストランの給仕として働き、夏だけの子守りの仕事を探す34歳の女性ブリジット(ケリー・オサリバン)。やっとのことで子守りの仕事を見つけた。
レズビアンカップル(チャリン・アルヴァレス&リリー・モジェク)の子で、6歳の少女フランシス(l)の子守りだった。頭が良くて悪知恵もはたらくフランシスに手こずるが、ブリジットの人生に少しずつ変化が訪れて……。
35歳独身女性と6歳の少女のひと夏の交流を描いたドラマ。家族にはもちろんのことだが、周りにいる他人には知られなくない「女ならでは」のことが、日常の生活の中でちょうど良い「赤裸々」さで描かれていた。これ以上あらわにするとグロテスクになるし、これ以下では共感は生めない。
そんな女ならではの「出来事」が見事に描かれていた。
ラモナ・エディス=ウィリアムズちゃに名子役賞
🎬『君を想い、バスに乗る』ギリーズ・マッキノン監督/イギリス/86分
愛する妻メアリ(フィリス・ローガン)を亡くしたばかりのトム・ハーパー(ティモシー・スポール)は、かつてメアリーと出会った場所を訪れるため、ローカルバスのフリーパスを利用してイギリス縦断の旅に出ることに決めた。
50年暮らしたスコットランド最北端の村ジョン・オ・グローツを出発、イギリス最南端の岬ランズ・エンドを目指して、様々な人と触れ合い、トラブルに巻き込まれながら、トムは妻と交わしたある約束を胸に旅を続ける……。
90歳のちょっと頑固な老人が一人バス旅行という設定。鞄一つのふらり旅ではなく、心に持った「思い出」や「約束ごと」は重い。
シワ一本、一本、足の動き一歩、一歩が印象に残った。周りは動画を上げて勝手に彼を話題の老人に仕立てあげたが、彼はそんなことは知らず、知ろうともせず、目的のために足を進めるだけだった。
🎬『マヤの秘密』ユバル・アドラー監督、脚本/アメリカ/97分
1950年代、アメリカのとある町に暮らすマヤ(ノオミ・ラパス)は、公園で子どもと遊んでいた時に、不意に指笛を吹いていた犬を呼ぶ男性(ジョエル・キナマン)を目にした。その指笛で一瞬にしてかつて自分を暴行したナチス・ドイツの軍人のことがフラッシュバックする。
男が乗っていた車をつけて、密かに調べて見ると近所に住んでいた。最近越してきたようだ。その数日後、車の故障をしたように装い、その男を拉致し、自宅の地下室に連れ込む。半信半疑の夫のルイス(クリス・メッシーナ)に手伝ってもらい監禁を続けるが、男は罪を否定し続ける。
ナチスはユダヤ人だけではなく同性愛者、心身に障害を持った者、ロマの人々を殺戮していたことは有名な話だ。
監禁された男の妻(エイミー・サイメッツ)は行方不明の夫を捜索している様子や、マヤは男の情報ほしさに心配顔で男の妻と会話するシーンもあって、ドキドキしてしまった。その妻が「行方不明になってはじめて夫のことについて何も知らなかったことに気づいた」と夫への不信感をのぞかせる。その言葉に、同情に似た気持ちになって行く。ここから先は是非劇場でご覧いただきたい。意外な展開が待っている。
ノオミ・ラパスさんに主演女優賞、ルイスの妻エイミー・サイメッツさんに助演女優賞
🎬『ゴヤの名画と優しい泥棒』ロジャー・ミッシェル監督/イギリス/95分
1961年、世界屈指の美術館ロンドン・ナショナル・ギャラリーからゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。この事件の犯人はごく普通のタクシー運転手である60歳のケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)。長年連れ添った妻(ヘレン・ミレン)とやさしい息子(フィオン・ホワイトヘッド)と小さなアパートで年金暮らしをする男。
街角に立って「ナショナル・シアターにゴヤの名画を展示する費用があるなら、日々の楽しみが少ない高齢者や退役軍人のためにBBCの受信料を無料にすべき」と演説したり、署名活動していた。そんな男が名画を盗んだとなって世間は大騒ぎ……。
これ、実話!正義感満々の少年がそのまま大人、いや、初老まで育った紳士が起こした(?)とんでもない盗みだ。奥様のイライラ、怒り、諦めなどにミッキーも同情したりハラハラしたりするが、それに上回る「夫婦愛」「家族愛」が描かれていた。
本当はもっと苦労したはずだと思うが、最後ににこやかに笑っている「ご本人」をみて、「この方なら許せるかも」と思った。
夫を演じたジム・ブロードバンド、妻を演じたヘレン・ミレンのご両人にベスト・カップル賞
🎬『ガガーリン』ファニー・リアタール、ジェレミー・トルイユ監督、脚本/フランス/95分
パリ東郊に位置する大規模公営住宅ガガーリン。宇宙飛行士ガガーリンの名を持ち、この団地で育った16歳のユーリ(アルセニ・バティリ)は、宇宙飛行士を夢見ているが、かつて自分を置いていった母の帰りを待ち続けていた。
ところがある日、老朽化と2024年パリ五輪のため、ガガーリン団地の取り壊し計画が持ち上がる。住人たちの退去が進む中、ユーリは母との大切な思い出が詰まった団地を守るため、親友フサーム(ジャミル・マクレイブン)や気になっている少女ディアナ(リナ・クードリ)とともに、取り壊しを阻止しようと立ち上がるが……。
始まりはガガーリンさんがこの団地の祝典に参加した時のニュース映像が流れた。にこやかに手をふるガガーリンさん一目みようと大変な数の人が集まっていた。そして時は流れて、現在。2024年に開催されるパリオリンピックのために老巧化したこの団地の取り壊し計画が本決まりになろうとしているガガーリン団地。
東京でも同じ理由で立ち退きが迫らたドキュメンタリーに『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』があって、どこの国もしわ寄せが庶民に押し寄せる構図になっていた。
ここに住む青年は思い出深い団地を守るために、そこで生き延びるために友人2人の助けをかりて、8階と屋上に密かに基地を作り始める。自家発電、野菜作りなど、想像以上のもので驚くが、刻一刻と爆破の時は迫ってくるシーンはハラハラさせてくれた。
撮影賞
🎬『TIThANE チタン』ジュリア・デュクルノー監督、脚本/フランス、ベルギー/108分/4月1日より新宿バルト9、伏見ミリオン座にて全国ロードショー公開
少女時代に交通事故で頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト・ルセル)は、それ以来、車に対して異常なほどの執着を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。
自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセント(バンサン・ランドン)と出会う。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、今は侘しい一人暮らし。2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があって……。
痛いものを見ちゃった。それも女性監督(前作は『RAW 少女のめざめ』もかなりキモいが)だから驚く。これチラシを見て「やめた」「みたい」とはっきり二分される。しかし、見た後は「痛み」が薄まっていることに気付く。特異な名作誕生と言えそう。
女性監督賞
🎬『カモン カモン』マイク・ミルズ監督、脚本/アメリカ/108分
ニューヨークに住んでアメリカをあちらこちらに駆け巡っているジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、ロサンゼルスに住む妹がやむおえない事情で家を留守にするので、ちょうど仕事の切りがついたジョニーは9歳の甥っ子をロサンゼルスの妹の家で預かることにした。だが、甥っ子ジェシー(ウディ・ノーマン)との共同生活は驚きと困惑の連続で……。
子どもは何でも敏感に察する能力があって、隠す能力も持っていることにあらためて気付かされた。おじさんと甥の距離感もとてもよかった。
🎬『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』バディム・パールマン監督/ロシア、ドイツ、ベラルーシ/129分
第2次世界大戦中、ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年ジル(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は、輸送のトラックで出会った男に持っていたパンと引き換えにペルシャ語の本をもらった。処刑される寸前で「自分はペルシャ人だ」ともらった本を差し出して一命を取り止める。
しかし、そんなジルに、将来イランのテヘランで料理店を開きたいという夢を抱くナチス食糧班の料理人将校のコッホ大尉(ラース・アイディンガー)から、毎日ペルシャ語を40単語教えるよう命じられた。
第2次世界大戦時にナチスドイツの強制収容所に入れられたユダヤ人の青年が、自身をペルシャ人と偽り、架空のペルシャ語のレッスンを行うことで生き延びていく姿を描いた戦争ドラマ。
監督はウクライナ出身のバディム・パールマン。
最後まで一気に観せてもらった。言葉を作って、それをずっと覚えていて、新たに増やしていく。語源は食事配膳の時にユダヤ人の名札を見て作っていくのだ。生きるための必死さが伝わって来た。
終わり方も良かった。
脚本賞