2023年01月01日

謹賀新年 2023 元日 2022年日本映画ベストテン

皆さま 開けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。朝、1人初コーヒーをのんびりすすっています。コースターはスラムダンクを見た時にいただいたもの。

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2022年は536本の映画を、劇場、試写室、オンライン試写、映画祭等々(Netflix、DVDは含まれていません)を観た。

日本映画ベストテン(1位から3位あり、他は順位なし)

1位

🎬『土を喰らう十二ヵ月』中江裕司監督/111分

初老の作家のツトム(沢田研二)は人里離れた長野の山荘で一人暮らしをしている。山の実、きのこなどを採り、畑を耕して作った野菜を料理して、季節のを感じながら、原稿を書いている。時々、担当編集者であり恋人でもある真知子(松たか子)が、東京から訪ねてくる。食いしん坊の真知子とふたりで、旬のものを料理して一緒に食べるのは至福の時間だ。若い恋人がいて、悠々自適な暮らしをするツトムだが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいて……。

味わいのある作品。手作りの料理がたくさん出てくるだけではなくて、全体に流れる四季の移ろいがとっても丁寧に描かれている。

それに沢田研二の名優ぶりに驚いた。優しい眼差し、声は柔らかく小さいのにセリフがしっかり聴こえる。野菜の髭根の泥を落とすところも「生きているもの」として扱っていた。火野正平、奈良岡朋子の語り口にも痺れた。沢田研二 主演男優賞

2位

🎬『ある男』石原慶監督/121分

弁護士の城戸(妻夫木聡)は、依頼者の里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫・大祐(窪田正孝)の身元調査を依頼された。数年前、里枝は子どもを連れて離婚して故郷に戻り、そこで出会った夫と再婚。新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていた。しかし夫は不慮の事放で命を落としてしまう。

悲しみの中、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が法要に訪れ、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言う。愛した夫は、名前もわからない知らない男だった。


「別人になって生きたい」願望は、今、苦しんで生きていらっしゃる幾千万人の気持ちの中にふっとよぎるものだろう。

監督賞、柄本明さんに助演男優賞

3位

🎬『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督、脚本/99分

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、東京・荒川河川近くの小さなボクシングジムで日々練習に励んでいた。彼女は努力の結果、プロ試験に合格。プロボクサーになって試合にも勝が、心中は不安や迷いだらけでいた。「一度、お休みしたいです」とジムの会長(三浦友和)に書いた手紙も渡せずにいた。そんなある日、彼女はジムが閉鎖されることを知る。

ついこの間香取慎吾さん主演『犬も食わねどチャーリーは笑う』の妻役を演じた岸井ゆきのさん。ボクシング・トレーナー役では本職でもある松浦慎一郎さん(2018年公開『かぞくヘ』主演)と練習するケイコの姿は当分忘れそうにない。よほど練習に練習を重ねたに違いない。映画の終わり方も気に入った。

脚本賞、岸井ゆきのさんに主演女優賞

🎬『宮松と山下』佐藤雅彦、関友太郎、平瀬謙太朗監督、脚本、編集/87分

京都の撮影所でエキストラをする宮松(香川照之)は、時代劇の切られ役をはじめ、店で飲んでいて喧嘩に巻き込まれて死ぬ役、ヤクザの抗争で撃たれるなど、日に何回も殺され役を演じている。生真面目で寡黙な彼の私生活は地味。しかし、彼は過去の記憶を一切失っているのだ。医者(黒田大輔 )にもかかっているが、精神的なものが大きいのではと言われる。

そんな彼の元に、ある日、男(尾美としのり)が訪ねてきて「やっぱり、山下だ!」と懐かしそうにするが……。

映画に見入っていると「はい、カット!」などと声が入るので「あー、よかった。撮影だった」とホッとして力が抜ける。

撮影所まで来た男は12年前に勤めていたタクシー会社の同僚で、テレビに出ているのを見て調べて来たらしい。その元同僚が「妹さんは家庭を持っている」という言葉に日を改めて「故郷と言われた地」を訪ねていく。

ここから過去がどんどん露わになるのだが、本人は半信半疑。しかし「過去」は身体が、味覚が、紫煙が覚えていて……。

「無機質」な音色を表した音楽担当の豊田 真之さんに音楽賞


🎬『夜明けまでバス停で』高橋伴明監督/91分

昼間はアクセサリー作りを教えたり委託販売して、夜は焼き鳥屋で住み込みのパートとして働く北林三知子(板谷由夏)は、コロナ禍の中で焼き鳥屋は休業。働く場所も住むところも失った。どうにか老人施設に住み込みの職を見つけて行ってみると、施設はコロナ患者が出て、今日で閉じることになったと言われる。

元同僚から「その後元気?」「次に職場はどうなの?」とラインが来ても窮状を打ち明けない三知子。彼女が最終的に寝るところは最終バスが出たあとの停留所だった……。

観ているのも辛い映画だった。2020年11月に起きた「幡ヶ谷バス停殺人事件」を基に映画化。

貧しくても働く場所と寝る場所がある中年女性が、何かのきっかけでずるずるっとホームレスになる時間って小1ヶ月ぐらいで出来上がってしまう展開にぞっとした。そうなる前に、何か手立てがなかったのか、いろいろ考えさせられた……。

🎬『川っぺりムコリッタ』荻上直子監督、脚本、原作/120分

北陸の小さな町にある小さな塩辛工場で働き口を見つけた山田は、社長から紹介された安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。できるだけ人と関わることなく生きたいと思っていた山田だったが、初っ端から、隣の部屋に住む島田が「風呂を貸してほしい」と山田を訪ねてきたことから一変する。

山田と島田は、少しずつ親しくなってきたが、山田がこの町にやってきた秘密を島田に知られてしまい……。

のどかで懐かしい風景に魅了された。川のそばにある築50年の長屋風のアパートが舞台。前庭もあって住民らが花や野菜を作っている。なぜかヤギさんが番犬がわりにつながれている。時々かわいいかすれ声でなくのがいい感じだ。

そんな情景の中、住む人は時代の流れに取り残された人々。目の前を流れる川のように順々と留まることなくき続けられる人生を夢見ながら、古アパートに暮らす人たちを追っている。

題名の「ムコリッタ(牟呼栗多)」は仏教の時間の単位のひとつ(1/30日=48分)を表す仏教用語で、ささやかな幸せの意味。

女性監督賞


🎬『百花』川村元気監督、原作、脚本/104分

レコード会社に勤める青年・葛西泉(菅田将暉)と、自宅でピアノ教室を開いている母・百合子(原田美枝子)は、以前、百合子が起こしたある事件によって、親子の間には溝があった。ある日、百合子が認知症を発症。進行もはやく、泉の妻・香織(長澤まさみ)の名前さえも分からなくなってしまう。

心に突き刺さった。ボケていている母の言葉にある「真実」、若い泉も忘れてしまった「出来事」、それぞれがピタッと合う最終場面で落涙。

菅田将暉や原田美枝子の演技より、地味な妻役をした長澤まさみが良かった。今までの派手な役柄には不満を感じていたが、今作ではじめて良い役者と思った。

長澤まさみさんに助演女優賞

🎬『サバカン SABAKAN』金沢知樹監督、脚本/96分

1986年、夏。斉藤由貴が大好きで、キン肉マン消しゴムを集めている小学5年生の久田孝明(子ども時代/番家一路、大人になって草なぎ剛)は、夫婦ゲンカばかりだが、愛情深い両親や弟の4人で暮らしていた。

夏休みのある日、家が貧しく同級生から避けられている竹本(原田琥之佑)突然訪ねて来た。学校でも口も聞いていなかった孝明は驚いたが、イルカを見られるところがあるから行かないかと言う。翌日、早朝から自転車二人乗りで行くが、溺れそうになったり、不良に絡まれたりしたが、それをきっかけにだんだんと仲良くなって、夏休み中は毎日のように遊んでいた。

貧乏な彼の家に行って、竹本の作るサバカンの握り寿司を食べさせてもらった。そんな夏休みも終わった時、思いがけない事故が起こって……。

いい映画だった。もう一度観たい。一度サバカンの握り寿司を作ってみようとも思っている。子ども時代の番家一路もイキイキとしていたが、竹本を演じた原田琥之佑が憂いもあって将来楽しみな子だった。

原田琥之佑少年に新人賞

🎬『こちらあみ子』森井勇祐監督、脚本/104分

広島に暮らす小学5年生のあみ子(大沢一菜)は風変わりな女の子。けっして怒らないお父さん・哲郎(井浦新)と妊娠中の母親で習字を教えているさゆり(尾野真千子)、ちょっと不良ぶっている兄ちゃん(奥村天晴)らに見守られながら暮らしていた。

しかし、あみ子のあまりにも奇妙な行動が、家族や友人たちに影響を与えるようになって……。

あみ子は好きな男の子の名前すら知らない子で、同級生の男の子に本名を教えてもらって、モゴモゴと本名を唱えている。この子の世界に唯一入り込めた同級生の男の子がとっても愛おしく感じた。

あみ子を演じた大沢一菜ちゃんに名子役賞

🎬『生きててよかった』鈴木太一監督、脚本/119分

相手にがむしゃらにむかっていくことで地味ではあるがファンを獲得していたプロボクサー・楠木創太(木幡竜)は長年の激しい闘いで体を蝕み、強制的に引退を迫られた。引退を機に恋人・幸子(鎌滝恵利)と結婚。新しい生活をスタートさせるが、新しい働き口では役に立たず長続きしなかった。

悶々としていたそんなある日、創太のファンだと名乗る謎の若い男(柳俊太郎)から、大金を賭けて戦う秘密の地下格闘技に誘われて……。

この作品に出てくるほぼ全ての人は良い悪いによらず「この場所で生きていく」ことに自覚はないものの「迷い」がないように感じた。それに役者=実生活において「役どころと同じ感情」を持っているのではないか、とも感じた。

これほど、サラッと「死」を描いた作品は知らない。



posted by ミッキー at 08:53| Comment(0) | ベストテン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする