あいちの映画祭で先週金曜日公開の作品を観ていなかったのでミリオン座で3本、ほぼ朝から夕方まで入り浸る予定。水筒、りんごの切ったもの、海苔巻きアラレ、飴ちゃんなどをバッグに入れて、薄手のカーディガンを持参した。
🎬『靴ひものロンド』ダニエレ・ルケッティ監督/イタリア、フランス/100分
1980年代の初め頃のナポリ。そこで暮らす4人家族(夫、妻、姉、弟)の平穏な家庭は、父アルド(ルイジ・ロ・カーショ)の浮気によって一変した。両親の激しい口論や父の魅力的な愛人、精神的に追い詰められた母ヴァンダ(アルバ・ロルバケル)の姿を見つめながら、子どもたちは父と愛人が住むローマとナポリを行き来する。
数年後、別れていた家族はあるきっかけで再び一緒に暮らすことになって……。
『ローマ法王になる日まで』のダニエレ・ルケッティ監督が、ドメニコ・スタルノーネの小説「靴ひも」を映画化した家族ドラマ。
イタリア映画をたくさん観ているが、この夫婦はどちらかと言えばフランスやスペイン映画のように感じた。映画の作りが約30年を行き来するので分かりにくい。わかりにくい一番の原因は、夫ルイジ・ロ・カーショの30年後がピンと来なかったからだ。背丈もずんぐりとなって知性的な面影の片鱗もなかったからだ。
演じている俳優さんには悪いがミスキャストだ。いい大人になった姉弟の振る舞いも「やり過ぎ」と感じた。
🎬『グッバイ・クルエル・ワールド』大森立嗣監督/127分
お互いに素性も知らない5人組の強盗組織が、小さいホテルで内密に行われていたヤクザの資金洗浄現場を襲い、1億円近い大金の強奪に成功する。強盗たちは金を山分けし、何食わぬ顔でそれぞれの日常に戻っていった。しかし、金を奪われたヤクザが以前から繋がっていた現役の刑事に強盗組織を追いかけるよう指示した。
大森監督作品では『さよなら渓谷』『セトウツミ』『タロウのバカ』がよかった。が、これはお暇ならどうぞのレベル。
西島秀俊、斎藤工、玉城ティナ、宮川大輔、三浦友和が強盗組織の5人。メンバーを演じ、彼らを追い詰める刑事を大森南朋。
西島秀俊さんは昔ヤクザで伝説の怖さと恐れられていたが、昔の怖さと今の家庭人の差が出ていない。それより妻子の家に帰ってから、昔の手下が訪ねてくるが、この役者さんが、そばに寄りたくないほど怖くてすごかった。短い出番だったがどういう役者さんだろうか。
🎬『LOVE LIFE』深田晃司監督、脚本/123分
再婚した夫・二郎(永山絢斗)と前夫の息子の敬太(嶋田鉄太)と妻・妙子(木村文乃)の3人で、小さな問題を抱えながらも平穏に暮らしていた。そんな生活がちょうど1年ほど経とうとしたある日、悲しい出来事が起こる。
悲しむ妙子の前に、失踪した前夫であり敬太の父親のパク(砂田アトム)が戻ってくる。再会をきっかけに、ろう者であるパクの身の回りの世話をするようになる妙子。
一方の二郎も、以前付き合っていた女性と会っていて……。
監督さんは『淵に立つ』の方。これが一番内容的に応えた。この作品も言うなれば「淵に立つ」だ。
二郎と妙子は福祉事務所の上司と福祉士の関係。二郎の元カノも同僚。妙子は後からここに入って来て、二郎と恋愛結婚したのだ。住むところは二郎の実家と同じ公団アパート(棟は違う)。パクは韓国人でろう者。
パクのこと以外は、人間関係に息が詰まる。勤め先も近く、同僚、義父母、そんな関係のところに住んだことはないけど、きっと誰もいない、誰も知らないところで深呼吸したいだろうな。
人生は思ったようにはいかない……それぞれの立場で「悲しみの深さ」の度合いが違うのは当然のことだが、思いもかけない「本心」がちょろっと出てくる脚本の妙、セリフの間合いが素晴らしかった。
★残念なのは矢野顕子が最後に歌う声に違和感。なんであんな甘ったるい声がこの作品に合うのかわからない。