🎬『オルガの翼』エリ・グラップ監督、脚本/フランス、スイス、ウクライナ/90分
2013年、ウクライナのキーウ。15歳の体操選手のオルガ(アナスタシア・ブジャシキナ)は、欧州選手権出場を目指し日々練習に打ち込んでいた。母親はジャーナリストでヤヌコービチ大統領の汚職を追及していたが、母娘が乗っていた車に何者かが故意に激突されてオルガは腕に傷を負った。危険を察した母親は、オルガを亡き父親の故郷であるスイスのナショナルチームに入れる。
スイスの体操施設はウクライナとは違い、何もかも揃っていて快適な場所であったが、フランス語かドイツ語しか通じなく、しばらくは孤独だった。
スイスチームでも頭角をあらわした彼女は、ウクライナに住む母親、体操仲間とリモートで話す毎日だったが、市民運動が激化して、変わり果てていく故郷の様子をSNSで知るオルガは……。
始まりのシーンは逆立ちした少女たちが訓練している風景で、皆、現役アスリートとわかった。もちろん主演のアナスタシア・ブジャシキナも現役に選手。まるでドキュメンタリーだ。
6ヶ月前に、ロシアがウクライナ侵攻を開始する9年前の出来事「ユーロマイダン革命」直前のキーウ。急に始まったように思われがちだが、そうではない道筋を15歳の体操選手の目から描かれていた。父方の家族と一緒にクリスマスを祝う場面もあって演出には抜かりがなかったし、オルガのウクライナの市民権を捨ててスイスで競技を行い、ニュース画面でウクライナの惨事をみる目には、いたたまれない気持ちと自分の複雑な立場が滲み出ていた。
アナスタシア・ブジャシキナさんは演技経験はないようだが素質は十分にあった。今は戦渦の中どうなさっているのか知りたい。