2022年05月29日

「EUフィルムデーズ2022」のお知らせ

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欧州連合(EU)加盟国の在日大使館・文化機関が提供する作品を一堂に上映するユニークな映画祭。20回目の今年はEU加盟全27カ国が参加し、EUが重視するソーシャル・インクルージョン:社会的に弱い立場にある人を排除・孤立させることなく、共に支え合う社会をテーマとした作品を東京、京都、オンラインで上映。

詳しくは https://eufilmdays.jp

既に観た作品の感想などを少しずつ。

🎬 『オライの決断』メフメト・アキフ・ビュユアタライ監督/ドイツ/100分

ちょっとした口喧嘩がもとで禁句である言葉「タラーク!」と3回、妻の留守電に入れてしまった夫オライは、後悔するが後の祭り。イスラムの法に詳しい人に相談すると「仮離婚して3ヶ月離れなければならない」と教えられた。

日本なら江戸時代の「三行半 みくだりはん」だ。夫から一方的に離縁される。タラークを3回言ってしまうと、1回離婚して別の人と結婚しないと、同じ人とは再婚できないというのが、伝統的なイスラームの教え。オライは心底、妻(美人さん)に惚れているので心配でならない。

🎬 『TOVE/トーベ』ザイダ・バリルート監督/フィンランド、スウェーデン/103分

1944年のヘルシンキ。戦時中、防空壕の中で怖がる子どもたちに語った物語からムーミンの世界を作ったトーベ・ヤンソンは、爆風で窓が吹き飛んだアトリエで暮らし始める。

有名な彫刻家で厳格な父とは相反する彼女の生活だが、一方、自分の表現と美術界の流れへの葛藤と恋愛を経て、舞台演出家の女性ヴィヴィカ・バンドラーと出会い、互いに惹かれあっていく。

ムーミンの物語の作者トーベ・ヤンソンの半生を描いている。

🎬『わたしはダフネ』フェデリコ・ボンディ監督、脚本/イタリア/94分

父のルイジと母のマリアと一人娘のダフネ(カロリーナ・ラスパンティ)は休暇のバカンスを楽しんでいたが、帰りぎわにマリアが倒れてしまう。すぐに病院に運ばれるが治療の甲斐なく亡くなってしまう。

突然の母の死でダフネは泣き叫び狂乱する。父(アントニオ・ピオバネリ)は落ち着かせようとするが、彼女は興奮するばかりだった。

マリアの葬儀が終わり普段の生活に戻る父娘。ダフネは勤務先のスーパーマーケットの同僚や友人の支えによって少しずつ平静さを取り戻し、明るい表情も出てきた。

だが父は寂しさと不安で家業のアンティークのお店も閉じていて一向にお店を開けようとしない。そんな父の様子にダフネは母の故郷トスカーナに電車と徒歩で行こうと提案する。

🎬『ルッツ』アレックス・カミーレ監督/マルタ/94分

漁師のジェスマーク(ジェスマーク・シクルーナ)は、祖父の代から受け継いだルッツに穴が空いていることに気づく。漁業で生活するには先が見えない状態の中で、修理にかかる代金や修理中の無収入を思うと気が重くなるジェスマークだった。

妻との間に生まれたばかりの男の子は、体重が増えないから発達障害かもしれないと高価な粉ミルクを飲むように医師に言われる。

妻は裕福な実家をあてにせざる得ない生活状況に赤子を連れて実家に一時的に帰ってしまった。残されたジェスマークは……。

ジェスマークの心優しさが漁のやり方や、子どもを抱く手つきなどから伝わってきた。美しい妻も実家に帰ってしまうが愛が薄れたのではないこともわかった。仕事と家庭の両立が難しいのは、ここマルタだけに限らない。世界のどこでも起こりうる若い夫婦の物語だ。

🎬『THE MOLE』マッツ・ブリュガー監督/デンマーク、ノルウェー、イギリス、スウェーデン

デンマークの元料理人のウルリクは、北朝鮮の闇を暴きたいという強い好奇心を抱き、スペインに本部がある北朝鮮との文化交流団体KFAにスパイとして入り込む。そこで数年間かけてKFA会長の信頼を勝ち取り、中心メンバーになる。コペンハーゲン出身で麻薬密売人の相棒と共に、独裁国家・北朝鮮に潜入。信頼を得たKFA会長の橋渡しで、武器や麻薬を製造、供給する北朝鮮の国際犯罪組織に潜り込んでいった。

デンマークの男性が北朝鮮の国際的な武器密輸の組織に潜り込み、隠しマイク、隠しカメラで、実態を暴き出したドキュメンタリー。「嘘でしょ?」「まさか!」の連続だった。北朝鮮に入り込んでものの見事にトップの方にまで会った実話『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」(2018)以上の緊張感でハラハラドキドキ。これ事実のことだが、ちょっと北朝鮮上層部の詰めが甘かったようだ。

まあこれが事実なんだから、ヘマをした交渉の高官たちは、今ごろ生きていない……可能性もある。ブリュガー監督は2009年に『ザ・レッド・チャペル』という衝撃的な作品を撮り北朝鮮を怒らせて入国禁止になった。
posted by ミッキー at 06:58| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする