2022年03月19日

第17回大阪アジアン映画祭(8)『赤ザクロ』『地のない足元』

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🎬『赤ザクロ』シャリパ・ウラズバエヴァ/カザフスタン/113分

38歳の女性アナール(アイヌール・ベルムカムベトワ)は夫マラット(ボラット・モミンジャノフ)と彼の連れ子の男の子と共に、都会から田舎町に越して来た。

貧血気味のアナールは妊娠していて、出産の不安を抱えながら、夫に職が見つかることを願っていた。自分のパソコンが壊れてしまい彼女も仕事できなくなり、その上、職探しに出た夫との連絡が途絶え、男の子が地元有力者の息子から性的虐待を受けて……。

じんわりと怖い作品。

夫からの音信が途絶えて、心配しながらも義理の息子に優しく接していた。生活が苦しく、職安に行くが女性の雇用はほとんどなく、スーパーのレジ係に雇ってもらえたが、お客に、これは明日新しいのが入ってくるからと教えてあげたり、値打ちな商品を選んであげたりと親切にしていたら、店主は売上第一で、彼女を即クビにしてしまう。

その店主の息子が男の子にイタズラした加害者……狭い町で泣き寝入りかと思いきや、彼女はちゃんと訴える勇気を持ち続けていた。男たちの勝手な言い分や臭いものに蓋をするような社会に、彼女自身も「痛み」を受けながら進んでいく姿が眩しく感じた。

🎬 『地のない足元』モハンマド・ラッビ・ムリッダ監督/バングラデシュ/90分

首都ダッカで私設救急車の運転手として働くサイフル。ジョムナ川流域の中洲にある故郷では家族が大洪水の被害にあっているが、仕事で帰ることもできない。彼は一時の気の迷いで大声で不平不満を喚き散らす女と結婚していた。

別れようと思っても法外な手切金を要求され、仕事は臭い死体を運んだり死にそうな老人を救急車に置き去りにされたり散々な毎日だった。

思いあまってお金のために犯罪に手を染めるが……。

観ているこちらも、もうどうにでもなれ!と思うぐらい暗ーい作品。水害にあっている彼の妻は夫の両親を気遣い、二人の子の命を守っているが、それも水の勢いには勝てなかった。

犯罪で得たお金を持って故郷にたどり着くが誰もいない…‥バングラデシュの現実を正視出来なかった。
posted by ミッキー at 14:43| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月18日

第17回大阪アジアン映画祭(7)『椿三姉妹』『はじめて好きになった人』

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🎬『椿三姉妹』バオ・ニャン、ナム・チト監督/ベトナム/116分

リー家の三姉妹は骨董品取引で有名な大富豪の一族。三女のリンがサイゴンからフエにある「白椿園」と名づけられている大豪邸に突然帰省する。リンの目的は長女レハが大切に保管する家宝の「鳳凰ローブ」を手に入れること。この鳳凰ローブがもうすぐ開催されるオークションの前夜に盗まれて……。

豪邸も豪邸。広大で携帯の電波が届かないぐらい。出てくるベトナム女優さんも超豪華❗️

三女リンは『パパとムスメの7日間』(OAFF2019クロージング作品)の主演ケイティ・グエン。

次女ホンは『サイゴン・クチュール』(OAFF2018『仕立て屋 サイゴンを生きる』)で中年になった主人公ニュイ役だったホン・ヴァン。

長女レハを同じく三姉妹映画『夏至』(2000)では次女だったレ・カイン。

で、映画は魑魅魍魎の内容で、オークションは皆、偽物で大儲け。しかし鳳凰ローブだけは本物という設定で、おデブでおしゃれしか興味のないおバカな次女は、姉妹や周りを欺くための「演技」とは……ミッキーも騙された!

★豪華絢爛で食あたり気味。

🎬『はじめて好きになった人』キャンディ・ン、ヨン・チウホイ監督/香港/94分

映画監督として少し軌道に乗って来たウィンラム(ヘドウィグ・タム)は、ある日、長年想い続けてきた同性の恋人だったサムユ(レンシ・ヨン)から電話で結婚式のブライズメイドをやってほしいと言ってきた。

かつては名門女子校の同級生だった2人の激しく想い合う行動に、サムユが転校することで2人の関係は切れた。しかし数年後、偶然に再開。ボーイフレンドが出来たとサムユから知らされ、傷ついたウィンラム。

30歳になってもお互い独身であれば結婚しようというサムユの言葉だけを支えにしてきたウィンラムはだったが、ブライズメイドの頼みは断ることが出来なかった。

映画監督になったのもサムユの夢の職業だったから。ウィンラムの切なさが伝わってくるが、やっぱりブライドメイドになってよかったと思わせる結末だった。


posted by ミッキー at 09:11| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月17日

第17回大阪アジアン映画祭(6)『アミラ』『縁起良き時(第1話)』

昨夜の深夜、福島県で大きな地震があった。東京も大層揺れたそうだ。今後1週間ぐらいは余波もあるかもしれないのでご注意ください。

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🎬『アミラ』モハメド・ディアブ監督/フランス・エジプト・ヨルダン・アラブ首長国連邦・サウジアラビア/98分

パレスチナの女子高生のアミラ(タラ・アッブード)は政治犯としてイスラエルの刑務所に入っている父ナワル(アリ・スレイマン)を尊敬崇拝していた。

ナワルは17年前に冷凍保存した精液でアミラを産んだように、もう一人、子を作ろうと妻ウォルダ(サバ・ムバラク)に相談。だがナワルの精子は妊娠不可能とわかった。

実話を基に作られている。イスラエルに長期に拘束されているパレスチナ人が同じ方法で妻に人工授精した子は、2012年以降101人にのぼり、その方法は今もわかっていない。

自分の娘ではないとわかっても父親の娘への愛は不変で、妻にも不貞の覚えはない。その元凶となった場面は映画中で示されるが、それは公開も視野に入れて書かないことにする。オチのつけ方も納得できた。

本作はこの衝撃的事実にインスパイアされた作品ながら、当事者たちが“自由の使者”と呼ぶ子を迫害する悲劇に仕立てていることから、国を越えた賛否の声に包まれた。

🎬『縁起良き時(第1話)』ホアン・シー/台湾・シンガポール/54分

台湾のとある都市にある葬儀場。納棺師のタン(リー・カンション)が運び込んだグォ・ボーシャンという男の遺体が手違いで消えてしまう。

一方、父親の葬儀のために久しぶりに集ったグォの3人の子らは、それぞれ結婚や仕事で問題を抱えていた。

葬儀の準備を進めるも、見栄や体裁しか考えておらず、父親の遺産のことにしか興味がない。ひとまず見つかったグォの遺体には厚塗りの死化粧が施されていて……。

最初に奇妙な猿の人形が踊っていてギョッとした。

葬儀は無事終わったがお骨になるまで時間がかかるにで長男、次男はタンに任せて帰ってしまう始末。最後に紛失した遺体のオチも面白く、続きを観たくなった。

★ホウ・シャオシェンがエグゼクティブ・プロデューサーを務めていて、長男役にデヴィット・ウー。

posted by ミッキー at 10:33| Comment(0) | 映画祭・映画関連催し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする