1位Netflix『クイーンズ・ギュンビット』スコット・フランク監督、脚本/アメリカ/アニヤ・テイラー=ジョイに主演女優賞
アメリカ、ソ連の冷戦時代のお話。アメリカの孤児院で育った少女ベス・ハーモン(アニャ・テイラー=ジョイ)は、8歳のころにある中産階級の夫婦の元に養女としてもらわれた。それまで孤児院で用務員をする男にチェスの手解きを受けていたが、教官に見つかりそれもできなくなった。そんな頃に養子縁組の話がきた。もらわれて行った先は夫婦仲がわるく、妻がベスを可愛がるのを見て、夫はこれ幸いとはがりにほとんど家には寄り付かなくなった。そんな時、とある店先でチェスの月刊誌を見つけて、応募すると……。
★まずチェス超天才少女ベスのアニヤ・テイラー=ジョイが素晴らしい。この子は『ウィッチ』や『スプリット』でホラー映画の新星❗️と言われていたが、ここではチェスで人生を開いていく役を演じている。あまりシリーズものは見ないが、シドニーの娘が是非みて、と言うので見た次第。話の展開も無理なく、ソ連の世界一王者に向かっていく気迫はすごかった。緊張から薬物に溺れたり、いくつかの恋愛もあったりと8歳から22歳を色濃く描かれていた。
2位Netflix『Leave No Tracek 足跡はかき消して』デブラ・グラニック監督/アメリカ/108分/2018年(劇場未公開 DVDなし)監督賞
陽もささない森林を歩く父娘。森の中でテントなどを張って生活をしている。手作りの道具、木の先を削って火をつけて煮炊きもしてる。手つきが慣れているのを見ると森の中で生活している様子だ。たまに身ぎれいにして町に出て食料を買う。お金は退役軍人の年金が出るのか、町に出たついでに保健局に行って薬をもらって自分では飲まないで森に住むホームレスに売って少しばかりの現金があるのか、最低限必要なものはかっていた。だが森の伐採業者に見つかり、取り調べの結果、福祉の手が差し伸べられて、住居、仕事、学校まで話が進み……。娘を連れて、又森へ。だが娘は
★こんな素晴らしい作品が公開されていなくて、DVDにもなっていない。Netflixで期間限定でやっていて、偶然9月2日までと書いてあったので夜中に一気見した。森に住む男は兵役後精神を病んで幼い娘と共に知恵を絞って森で生活していた。福祉の手によってだんだん人間らしく生活環境が整えてられたが、男は何故か再度、森に入る。娘は新しい生活に目を輝かせているが父親に背けずついていく。もう何年か前に藤本幸久監督が、戦争体験を持つ若者たちのその後を追った8時間以上にわたる長編ドキュメンタリー『アメリカー戦争する国の人々』を見たことがあって、従軍後、ホームレスになって森に住んでいる人々の存在を知った。その人たちも薬をもらっていたが、2級品のものしかくれないと怒っていたのを思い出した。
3位Netflix『相撲人』マット・ケイ監督、脚本、撮影/イギリス/19分/作品賞
ふっくらまあるい日和さん。ニコニコ乙女顔と相撲試合の「男前」真剣顔、両方とも魅力的だ。彼女の今までを検索してみた。1997年8月21日青森県で生まれ、少年力士だった兄の影響で小学校1年生で相撲を始める。中学校の相撲部に入ったが高校生になると男女の実力差が大きくなるため、母校の中学校の男子相撲部員を相手に稽古。2014年と2015年の世界女子ジュニアで優勝。2016年に立命館大学に進学。2018年と2019年の相撲世界選手権では無差別級で準優勝。彼女を取材した短編ドキュメンタリー映画『Little Miss Sumo』はロンドン映画祭で上映。日本では2019年に『相撲人』という題名でNetflix公開。2019年にはBBCの「今年の100人の女性」に選出された。大学卒業後は実業団相撲のアイシン精機相撲部に初の女性部員として加わり、社員の福利厚生を担当している。将来は相撲の五輪競技化のために力を尽くすことを目標にして精進している。女子相撲映画で他に一押しなのがイギリス映画『恋はハッケヨイ!』(イモジェン・キンメル監督、脚本/2000年公開)相撲に夢中になる太め女性たちを描いている。DVDあり。
Netflix『この茫漠たる荒野で』ポール・グリーングラス監督、脚本/アメリカ/脚本賞、ヘレナ・ゼングルに子役賞
南北戦争が終結してから5年。退役軍人のジェファソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)は、各地を転々としながら世界のさまざまなニュースを読み伝える仕事をしていた。
その旅の途中、森の中でキッドはジョハンナ(ヘレナ・ゼングル)という少女と出会う。6年前にネイティブアメリカンに連れ去られ、そこで育てられたジョハンナは、英語もわからず、多田ひとり壊れた馬車の中に潜んでいた。見かねたキッドは、彼女を親族のもとへ送り届ける役目を渋々引き受けるが……。
南北戦争は1861年から1865年。それから5年後が舞台。キッドはテキサス州を転々として、そこで暮らす人たちに新聞を読んで解説したり、世界各地のニュースを時には冗談を交えたりして聞かせている。小さな会場だが満員で、きっと文字も読めない人もいただろうから、そんな仕事も人々にとって楽しみにしている様子が伝わってきた。新聞を読み解く知性と喋りのうまさ、比喩の仕方などトム・ハンクスならではの役。そして少女役がトム・ハンクスと対等に演じている新星❗️南北戦争後の目を覆いたくなるほどの不穏な社会と、心が固く結ばれていく2人のロードムービーをご覧いただきたい。
Netflix『マ・レイニーのブラックボトム』ジョージ・C・ウルフ監督/アメリカ/歌手賞
1920年代のシカゴ。ある暑い日の午後、ブルースの母と呼ばれている歌手マ・レイニー (ヴィオラ・デイヴィス)のレコーディングが行われる予定だった。時間になってもマ・レイニーは来ず、待ちくたびれたバンドのメンバーたちは皮肉を交えたバカ話をしていた。
その中でも一番若いトランペット奏者のレヴィー(チャドウィック・ボーズマン)は給金以上する靴を買って自慢げに見せびらかしていて、自分の解釈でレコーディングすることになったと鼻高々に演奏し始める。マネージャーがヤキモキする中、マ・レイニーがやってきて「そんな話は聞いていない」とピシャリと言い放つ。彼女は自分のやりたいようにやると言い張り、白人のプロデューサーと楽曲制作の主導権をめぐって対立して……。
★この作品で主演男優賞にノミネートされているチャドウィッグ・ボーズマンさんは去年2020年8月にお亡くなりになった。自分の才能に自信があり夢を追い続けているトランペット弾きのお兄ちゃんという、ちょっと突っ張った若者を演じていた。一方のマ・レイニー演じるヴィオラ・デイヴィスさんはどんな小さなことでも頑として譲らない強い女、声は太いが高音低音の響きが統一されていて体全体が「楽器」になっていた。メイキング映像もNetflixにあってそれも併せて見ていただきたい。
Netflix『ラターシャに捧ぐ〜記憶で綴る15年の生涯〜』ソフィア・ナーリ・アリソンの監督/アメリカ/話題賞
1991年3月16日にロサンゼルスで起きた、韓国系アメリカ人経営の個人商店主による黒人少女射殺事件。犠牲となったラターシャ・ハーリンズの15年間の人生と衝撃的な事件の顛末を、彼女の従妹シャイニー・ハーリンズと親友タイビー・オバードの証言を通して振り返る。
★この暴動は世界発信されたのでよく覚えている。射殺されたラターシャは成績はオールAで親切な女の子で、親友のタイビーが集団の男の子にいじめられていた時に助けてくれたのが縁で仲良くなった間柄で、事件を振り返っている間も涙が止めどもなく流れていた。この事件は2018年に公開されたハル・ベリー主演の『マイ・サンシャイン』でも描かれている。
ラターシャ・ハーリンズ事件の加害者は保護観察処分と500ドルの罰金で収監はなしの判決が下った。
Netflix『タルーラ〜彼女たちの事情〜』シアン・ヘダー監督/アメリカ
主人公のルー(エレン・ペイジ)は車上生活をしている自由奔放な若い女性。現住所がないので働き口は無く、盗んだりホテルのゴミ箱や客の食べ残しなどをボーイに見つからないように食べて、どうにか生きている。そんなある日、セントラル・パークで青年に出会う。青年はこの近くの高級マンションの住民だったが、話すうちに気が合って一緒に車であちらこちらに行くようになった。そんな車上生活も2年ほど過ぎた頃、無銭飲食やゴミあさりには飽きたから家に帰ると言い突然いなくなってしまった。腹が立ったルーはマンハッタンの高級マンションに住む彼の母親を尋ねるが、彼はいなくて母親マーゴから相手にもされず追い出されてしまう。空腹で倒れそうになったルーは高級ホテルに入り込んで、ホテル通路に出ているルームサービスの残り物を食べていたら、急に部屋の扉が開き客室係と間違えられ、部屋に連れ込まれ「パーティに行くから赤ん坊の面倒見ていて」と多額なチップをくれて出て行ってしまった。部屋には一歳ぐらいの裸の赤ちゃんがいて、ほっておくわけにもいかないので面倒を見ていた。そんな母親(タミー・ブランチャード)はグデングデンに酔っ払っていて寝込んでしまい、このままでは赤ん坊はどうなることかと、ルーは赤ん坊を抱いてホテルを出た。それからもう一度マーゴのマンションに行って「あなたの孫です」と嘘を言うと……。
★これは掘り出し物。出ているのはヘレン・ページ、エリソン・ジャネイ。最後は涙が出てしまった。この3人の女性は、年齢も生活レベルも違っているが、内面は「孤独」で、3人の縁ある男は皆、身勝手。そんな状況が浮き彫りにされていた。
Netflix『ザ・キッチン』アンドレア・バーロフ監督、脚本/アメリカ/102分/撮影地(ヘイズキッチン)賞、マーゴ・マーティンディルさんに助演女優賞
時は1978年。舞台はマンハッタンのヘルズキッチン。そこに住むキャシー(メリッサ・マッカーシー)、ルビー( ティファニー・ハディッシュ )、クレア(エリザベス・モス)の3女性は夫がアイルランド系ギャング組織の人間で強盗事件を起こして刑務所に。組織からはほんのわずかばかりの生活費のみで納得できない3人は、協力して組織のナワバリの店から「みかじめ料」を受け取る仕事をする。もちろん組織が認めない。キャシーたちはそれでも組織を敵にまわして戦う。
★3人の女たちが闇の男社会でのし上がっていくのは面白い。都合の良い展開と思うが、それぞれ3人は差はあるが夫に大きな不満を抱えている。みかじめ料も取るだけとって何もしてくれない組織より彼女たちの方が目を配ってくれるなど評判がよくてお金も入ってくる。
粗末な身なりだった彼女たちの洋服、持ち物、ヘアスタイルがどんどん良くなっていくのも良かったし、殺しの場面も、死体細切れ作業もちゃんと見せてくれた。(結構、たくさん殺しているから、心配になる)
Netflix『群がり』ジュスト・フィリッポ監督/フランス
虫が嫌いな方は、始まりから5分以上見ていられない作品。群がってくるのはイナゴ。正確には「群がるぐらい繁殖させて、それを粉末にして小麦粉に混ぜて……」という商売をするシングルマザーの物語。
★イナゴの甘露煮は山形ドキュメンタリー映画祭の土産物屋さんに売っていたのを見たことがある。確かに若いときに食べた記憶があるが、この作品を見たら今後口にしたくない!と思った。シングルマザーと娘の二人暮らしでイナゴを繁殖させて生活を立て直そうとしたがなかなか繁殖しない。そんな時、腕に傷をおって血が出ているところにイナゴが吸いよってきて……あ、あ、もうこれ以上、想像だにしたくない(ぐらいホラー度が高くミッキー的には超オススメ)。
🎬『イカゲーム』ファン・ドンヒョク監督、脚本、製作/韓国/話題賞、編集賞
シドニーに住むオージー婿のエディが面白いから是非に、と言ってくれたがいろいろ忙しくて今日やっと時間が取れて、婿と話を合わせるためにちょっとだけ見ようとNetflixを開いたが、想像とは違って(ゲームものかと軽く思っていた)いた。
★集まってくるのはお金に困った人ばかりで抱える事情もいろいろ。人間ドラマの要素も入っていて見応え十分だ。まずは出演者紹介。
ギフン(イ・ジョンジェ)
開業した飲食業が失敗に終わり、現在は運転代行の仕事をしている47歳。3年前に離婚し、今は借金取りに追われる日々を過ごしている。大金を用意する必要にかられ、駅のホームで出会った謎のメンコ男の招待を受け、ゲームに参加することに。ゲーム参加番号は456番。
サンウ(パク・ヘス)
ギフンと同じ町、同じ高校で育ったソウル大学出身の秀才。証券会社でチーム長を務めていたが、顧客の金を横領して先物取引などをして失敗。莫大な借金を抱えることに。ゲーム参加番号は218番。
イルナム(オ・ヨンス)
脳腫瘍があるため余命が長くないと告白するヨボヨボの老人、ギフンはなにかと手助けをして親切にする。ゲーム参加番号は001番。
ミニョ(キム・ジュリョン)
ゲームで生き残るために、ドクスの仲間になろうと取り入る男好き中年女性。ゲーム参加番号は212番。
セビョク(チョン・ホヨン)
競馬場でギフンとぶつかった際に彼の金を盗んだスリ。脱北者で家族のために大金が必要なためゲームに参加する。ゲーム参加番号は067番。
ドクス(ホ・ソンテ)
暴力団組織の人間。カジノで大負けして大きな借金を背負っている。ゲーム参加番号は101番。
アリ(アヌパム・トリパシ)
パキスタンから韓国に来て働いている男性。ピンチを救ったことをきっかけにギフンたちと行動を共にすることになる。ゲーム参加番号は199番。あ
ジュノ(ウィ・ハジュン)
行方不明の兄を追ってゲームの会場へ忍び込む刑事。他に思いがけない韓国大スター登場❗️
とにかく、子どもの遊びを模して命懸けのゲームをして、負ければ即座に殺される。殺された人は臓器をとられるのかと思ったが目的はそうではなかった……。これ世界のいろんな国で見られて凄いことになっている。その割にはお金はそう掛かっていないみたいで、最後にわかる有名俳優、最後のドンデン、主演ギフンの決断が見もの。是非、ご覧いただきたい❗️