2021年11月06日
第34回東京国際映画祭(7)『アメリカン・ガール』『箱』
🎬『アメリカン・ガール』ロアン・ファンイー監督、脚本/台湾/101分/アジアの未来
SARSが流行っていた2003年。13歳の少女ファン(ケイトリン・ファン)、母親(カリーナ・ラム)、幼い妹の3人は、教育のために父親を台北に残して、ロサンゼルスで暮らしていたが、母親が肺癌になったことで父親の住む台北に戻ってきた。
しかしアメリカの自由な学校生活から、台北の名門校に馴染めず「アメリカン・ガール」とからかわれていた。台北のアパートは父親の所有だが古い上に狭く、早くアメリカに帰りたいと、ことあるごとに両親に訴えていた。
母親の病気のこと、妹がSARSの疑いを受けて大変な思いをしたことなど、いろいろ辛いことがあったが、ファンは学校の弁論大会で「家族」について発表することになったが……。
一家族の模様を、思うようにいかない事で悩んだり、ちょっと楽しいことがあったりという生活を、正直にしなやかに描かれていて好感が持てた。
★お母さん役がカリーナ・ラウさん。病身役だが美しさや存在感は変わっていなかった。
🎬『箱』ロレンソ・ビガス監督/アメリカ、メキシコ/93分/ワールド・フォーカス
メキシコシティで祖母と暮らしている少年ハツィン(ハツィン・ナバレッテ)は、父親の遺骨が見つかったという知らせに、一人でメキシコ北部のチワワ地方に来た。父親は数年前に季節労働者として、チワワに働きに行って音信不通になっていたのだ。
遺骨を引き取って帰りのバスに乗り、外の様子見ていると、父親(エルナン・メンドーサ)とそっくりな男を目にした。思わずバスを止めてもらって立ち話をしている父親に走りよるが……。
メキシコのチワワ地方の砂漠地帯には民家はなく大小の工場があるだけ。そこに大きな穴があり、そこから50人以上が殺害され埋められていた。穴からそう遠くない所に遺骨を引き取る事務所が(大きなプレハブのような建物)があった。
殺風景、殺伐といった言葉がぴったりの土地だ。
少年は父親だと確信して遺骨を返しに行くと女性事務官は「なかなか骨と一致しないのよ」と返却に応じてくれたが、遺体にあった身分証明書が証拠という不確かなものだった。
父親とおぼしき男は何回も来る少年を「父親ではない」と追い返すが、移民たちを労働者として斡旋している男は読み書きができて頭もいい少年を手伝わていく。
この父息子が本当に父子なのかは最後までわからなかった。少年はここに多分1ヶ月以上滞在していろんなことを見て成長する映画と捉えれば納得できる。
砂埃や乾いた空気にさらされて、観たあと喉がカラカラになった。